米アップルの組織や内部プロセスを明らかにしたベストセラー。どん底から急成長を遂げたアップルに学びたいと考える企業は多いと思うが、本書で実情を知れば愕然とするだろう。製品の細部にわたる徹底主義は有名だが、ジョブズがすべてを決め、「スティーブのリクエスト」となれば誰も断れず、日夜働かされる。秘密主義は社内でも徹底され、多くの社員は大きな権限を与えられるどころか、狭い責任範囲に閉じ込められる。社内の雰囲気は暗くひたすら働くだけの場所だ。

 本人はナルシストで風変わり、他人の感情もおかまいなし。パートナーや社員にも傍若無人。それでも批判されないのは「ひとえにジョブズ本人と、消費者が彼に感じている絆による」という。技術やビジネスに鋭い洞察力を持ち、起業家精神で常に革命を起こすべく努力する。アップルから学ぶために参考となる情報は少ないが、裏話が充実してファンは必読の書。

インサイドアップル

インサイドアップル
アダム・ラシンスキー著
依田卓巳訳
早川書房発行
1680円(税込)