Androidは現時点で最も多くの台数のスマートデバイスに搭載されているOSだ。iOSを推進するAppleが徹底して「隙のない」垂直統合モデルを構築する戦略を取るのに対して、Androidの実質的な開発元であるGoogleの事業戦略は外部からは「隙だらけ」に見える。その一方で、同社は社外の開発者による「外部のイノベーション」を取り込む余地を残しているようにも見える。

史上最速で普及したOS

 Androidは驚くべき勢いで普及している。Android搭載デバイスは累計4億台以上がアクティベートされている。しかも1日100万アクティベートで増加中だ(2012年6月開催のGoogle I/O 2012基調講演[関連記事]より)。

写真1●累計4億台以上がアクティベートされたAndroid搭載デバイス
Google I/O 2012基調講演の動画より
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 2008年10月にAndroid OSを搭載した最初のスマートフォン「G1」が発売された。それからわずか3年8カ月で4億台という数字を達成している。その普及のペースはiOSをも上回る。

 Androidの普及が急激だった理由の一つは複数の端末メーカーや各国の通信事業者を上手に巻き込んだ事だが、そうした供給者側の理屈だけではここまで爆発的なペースは達成できなかっただろう。多くの消費者が「スマートデバイス」という新たなカテゴリのコンピュータを望んだことが、Androidの猛烈な普及につながったのだ。

Googleの業績にはまだ貢献せず

 Android OSの実質的な開発元はGoogleだ。Googleは、大規模なソフトウエアであるAndroidを猛烈な勢いで開発し、改良し続け、1年に2回のペースでメジャーアップデートを実施している。Googleの開発力がなければ、Androidはここまで急成長しなかっただろう。

 ただし、Googleという企業がAndroidについてどのような戦略を持っているのか、そして今後Androidエコシステムをどのような姿に成長させようとしているのかは、外部からは分かりにくい。

 分かっていることは、AndroidのGoogleの業績への寄与はまだ小さいこと、しかしインターネット企業としてのGoogleにとってスマートデバイスは最も重要なターゲットであることだ。

 Androidのエコシステムは、端末メーカー、通信事業者らがそれぞれ付加価値を分け合う構造となっている。Googleの「取り分」は控えめだ。Android OS自体はオープンソースであり、端末が売れたからといってライセンス料が発生する構造ではない。Googleが得る収入は、有料アプリ売上げの手数料(5%)、それにAndroid端末からのモバイル広告売上げということになる。

 Googleの決算報告によれば、同社の2011年度売上げ379億500万ドルの96%がインターネット広告収入である。英Guardian紙は、OracleとGoogleとの裁判で提示された和解条件から逆算して、Googleが2011年末までにAndroidから上げた売上げは5億5000万ドルと試算している。数億台の端末から得た売上げとしてはきわめて控えめな数字といえる。

 Googleは世界最大シェアのスマートデバイスOS(Android)の実質的な開発元であるにも関わらず、売上げへのAndroidの直接的な寄与はごくわずかと考えられる。AppleがiOSデバイスの成功により会社を急成長させているのとは対照的だ。

 そのためか、GoogleがAndroidに関して打ち出す戦略には「模索」の色合いが強いものが多い。Androidの今後の動きを考える上では、こうした不確実さ、予測の難しさを織り込む必要がある。