無線LANに関連する業界団体であるWi-Fiアライアンス。ここにきて立て続けに、無線LANの利用シーンを広げ、使い勝手を増すような認定プログラムを走らせている。例えば2012年6月末には信頼された公衆無線LANへの接続を自動化する「Wi-Fi CERTIFIED Passpoint」(関連記事)を開始し、この秋にはディスプレイやオーディオ機器を既存ネットワークへの接続なしで無線LANで結び、ワイヤレスによるオーディオ/ビデオ環境を実現する「Wi-Fi CERTIFIED Miracast」の認定プログラムを開始予定だ。

 Wi-Fiアライアンスの最新の活動状況について、マーケティングディレクターのケリー・デイヴィス フェルナー氏に聞いた。

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション


Wi-Fiアライアンスは、これまで無線LAN機器の相互接続試験を中心とした団体のイメージがあった。最近の活動を見ると、その印象が変わってきている。

Wi-Fiアライアンス マーケティングディレクター ケリー・デイヴィス フェルナー氏
Wi-Fiアライアンス マーケティングディレクター ケリー・デイヴィス フェルナー氏
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 Wi-Fiアライアンスは一般的には、ベンダー中心の組織で、機器の相互接続試験を中心とした活動だけをしているように見られる。しかし、この5年間ほどで実態が変わっている。

 多くの通信事業者が参加しており「Passpoint」のような、使い勝手に着目した認定プログラムに力を入れている。このほか家電機器の連携などマルチメディア系の認定プログラムや、スマートエナジー関連の分野にも注力している。

Wi-Fiアライアンスで進めている最新の認定プログラムを教えてほしい。

 まず力を入れているのは、公衆無線LANへの接続性を向上し、使い勝手を改善する「Passpoint」だ。

 さらに複数のアクセスポイントが存在する環境下で、クオリティーの高い音声アプリケーションを実現する「Voice Enterprise」という認定プログラムを進めている。

 またこの秋、おそらく9月には、これまで「Wi-Fiディスプレイ」として進めてきたディスプレイやオーディオ機器をWi-Fiで結ぶ認定プログラムを「Miracast」という名称で開始する予定だ。

 このほか60GHz帯を使うIEEE 802.11adの認定プログラム、5GHz帯を使うIEEE 802.11acの認定プログラムも準備中だ。

PasspointやVoice Enterprise、Miracastなどは、機器自体の認定プログラムというより、ユースケースを描いた上で策定した認定プログラムという印象を受ける。

 その通りだ。通常の接続性の認定プログラムは、既存の取り組みで十分だろう。しかし使い勝手についてはまだまだ再考の余地がある。PasspointやMiracastは、使い勝手を改善するプログラムだ。我々の取り組みは使い勝手の改善がドライバーになっている。

認定プログラムの広がりを見ると、無線LANの用途が拡大しているようにも感じる。それと同時に参画プレーヤーも増えている印象だ。なぜさまざまなプレーヤーが無線LANに注目し、用途を拡大しているのか。

 Wi-Fiの利便性が高く、万能なテクノロジーだからだろう。スマートメーターのような小さなデータの伝送から、マルチメディア向けの大容量のリッチデータまで、幅広い用途に対応できる。

 Wi-Fiが手頃な価格で手に入る技術であることも利点だ。多くのチップセットが登場し、多くのベンダーが幅広いジャンルのデバイスをマーケットに投入している。