NECが同社製メインフレーム「ACOS-4シリーズ」の専用プロセッサ「NOAH」を復活させた。2012年6月28日に発表した大型機「i-PX9800/A100」に、ACOS専用の「NOAH-6」を搭載する。NECは2004年に、ACOSのプロセッサをNOAHから米インテルの「Itanium」に切り替えた。しかしItaniumの性能向上が進んでいないことから、NOAHに戻した。

 今回発表したi-PX9800/A100の販売目標は「3年で150台」(同社広報)である。1年間にわずか50台しか売れない機種のために、専用プロセッサを開発したわけだ。それでもNECは、「開発コストは回収できる。赤字にはならない」(サーバ事業部の中島義博事業部長代理)と見込む。

 i-PX9800/A100の事業が黒字となる理由として、中島事業部長代理は二つの理由を挙げる。開発コストの大幅削減と、外部ファウンドリー(半導体受託生産会社)の活用だ。

 NOAH-6は2001年に発表した前モデル「NOAH-5」のアーキテクチャーを踏襲する(写真)。プロセッサのコア数を1個から4個に増やし、別チップだった制御回路や2次キャッシュを内蔵しただけで、新機能は追加していない。10年前に比べてプロセッサの設計ツールが進化したため、設計チームの人員数は10分の1で済んだ。その結果、NOAH-6の開発コストはNOAH-5の半分以下になった。

写真●NECのメインフレーム専用プロセッサ「NOAH-6」
過去の専用プロセッサに比べて、開発コストを50%以上削減している
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 NOAH-5までは半導体を自社生産していたが、NOAH-6は海外のファウンドリーに生産を委託する。設備投資が不要になっただけでなく、プロセッサの製造技術も40ナノメートルにまで微細化できた。i-PX9800/A100は、Itaniumを搭載する従来機の3.5倍の性能でありながら、消費電力は60%削減している。

 NECによれば現在、ACOS-4の既存ユーザー20社が、i-PX9800/A100の導入を検討しているという。ACOS大型機のユーザーといえば三井住友銀行が有名だが、「銀行以外の一般企業からの引き合いもある」(中島事業部長代理)。標準レンタル価格は月額950万円からで、9月28日に出荷を開始する。