成長への期待の大きさが、IT企業の株価の明暗を分けている。富士通やNECなどがさえない一方で、日本オラクルや伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)などが株式市場で脚光を浴びている。
なかでも好調なのが日本オラクルだ。2012年7月5日の終値は3410円と、昨年12月30日の終値(2547円)に比べて34%上昇した。同期間の日経平均株価の上昇率である7%を大きく上回った(図)。
好調な業績が主な要因である。日本オラクルの2012年5月期単独決算は、売上高が前期比8%増の1429億円、営業利益が同9%増の404億円と、いずれも過去最高を更新した。13年5月期も増収増益を達成する見込みだ。
特に好調だったのがハードウエア事業。サーバーなどの販売が伸び、前期比で33%の増収となった。データベースも好調で、ソフトウエア全体で7%の増収だった。大和証券の上野真アナリストは「(ハードとソフトを一体化した)Exadataなどの製品を武器に、旧来型ITサービス会社の市場を侵食している」と指摘する。
CTCの株価は半年で13%上昇した。スマートフォンの普及が要因だ。トラフィックの増加に対応するため、各通信事業者が設備増強を続けており、ネットワーク機器などの受注が伸びた。「2013年3月期も強さは持続する」と複数のアナリストが声をそろえる。
一方で、NECに対しては厳しい視線が注がれている。ルネサスエレクトロニクスの再建問題なども影響し、5月29日には105円と年初来の最安値を記録。時価総額は一時3000億円を割り込んだ。7月に入っても株価は低迷している。ある証券アナリストは「国内のITサービスの利益水準が低い。携帯電話事業も重荷だ」と話す。
富士通も軟調だ。過去半年間の株価推移は、日経平均を下回っている。ゴールドマン・サックス証券の松橋郁夫アナリストは「現時点では積極的な評価がしづらい。海外事業の収益が改善するという確証を市場参加者が持たないと、株価は反応しない」と手厳しい。国内に注力するだけでは、買いの「手がかり」に乏しいという。
市場が納得する成長戦略をどう描くのか。NECと富士通が背負う課題は重い。