7月23日より、秋期の情報処理技術者試験の申し込みが始まります。ネットワークスペシャリスト試験の出題範囲は幅広く、準備はできるだけ早く開始したほうがよいです。受験予定のみなさんが勉強の計画を立てる際の一助となるように、ネットワークスペシャリスト試験の傾向と対策をまとめます。

午前I/午前IIの傾向と対策

概要

 ネットワークスペシャリストの午前試験は、午前Iと午前IIに分かれています。試験の時間、出題形式、問題数を下記の表にまとめています(表1)。

表1●午前I/午前IIの概要
表1●午前I/午前IIの概要

 午前Iの試験問題は、ネットワークスペシャリスト以外の高度試験と共通の問題です。出題される内容は、ネットワーク技術に限らずデータベース、プログラミング、プロジェクト管理などIT技術全般にわたります。

 午前II試験で出題される問題内容は、ネットワーク技術に絞られています。LAN、WAN、TCP/IPの各種プロトコル、IPルーティング、IPアドレス、ネットワークセキュリティなどの幅広いネットワーク技術に関する問題が出題されます。

傾向と対策

 午前I/午前IIは、共に非常に幅広い範囲から出題されます。このような幅広い範囲をすべて網羅して勉強することはとても大変で、現実的ではありません。午前I/午前IIでは、過去に出題された問題が、選択肢まで含めて全く同じ内容で出題されることがよくあります。

 2012年5月に情報処理技術者試験の出題範囲およびシラバスが改訂されましたが、出題の傾向は大きく変わることはないでしょう。出題範囲およびシラバスの改訂内容は、これまでも出題されていた技術が明記されるようになっています。技術的に全く新しいことが出題範囲に追加されているわけではないので、これまでと同じように過去に出題された問題と同じ、または類似した問題が多く出題されるでしょう。

 そのため、午前I/午前IIの対策として最も効率的なのは過去問題です。過去3~4年分程度の午前問題を繰り返して、暗記するぐらいまでになれば午前I/午前IIで十分に合格レベルに到達することができます。

 ネットワークスペシャリスト試験では午後I/午後II問題で合格水準の解答ができるようになることが一番重要です。午前問題の対策にはあまり時間をかけず、移動時間などのすき間時間を使うようにして、午後問題の対策に時間を有効に活用するとよいでしょう。

※参考:「情報処理技術者試験の出題範囲」改訂版(変更箇所表示版)

午後Iの傾向と対策

概要

 ネットワークスペシャリスト試験の午後I試験は、記述式問題です。3問中2問選択して解答します。次の表に午後I試験の概要をまとめています(表2)。

表2●午後Iの概要
表2●午後Iの概要

 それぞれの問には、設問が3~4つあります。

傾向と対策

 午後I試験の各問では、フォーカスしているネットワーク技術のテーマがあります。その技術のテーマに沿って、設問が作られています。過去3年の午後I試験で扱っている技術をまとめたものが次の表3です。

表3●午後Iで扱う主なネットワーク技術
表3●午後Iで扱う主なネットワーク技術

 午後Iの各問の設問は、こうしたネットワーク技術の基本的な仕組みをきちんと理解しているかどうかを問う内容です。もちろん、フォーカスしているネットワーク技術以外の設問もあります。

 午後Iは、3問中2問選択して解答します。そのため、フォーカスしているネットワーク技術があるということを分かっていれば、解答する問を選択するときの選択基準になります。しっかりと勉強した技術がテーマとなっている問を選択すれば、解答しやすくなるでしょう。

 午後Iの対策として、効果的なのはやはり過去問題です。過去問題を一通りやってみると、技術の理解が不十分な点が明らかになるでしょう。理解が不十分なネットワーク技術の仕組みをしっかりと復習することが重要です。

 その際は、規格名称や技術の基本的な動作の仕組みまでしっかりと復習してください。たとえば、認証技術ならば、どのような手順でどのような情報をやり取りすることで認証を行うかというレベルまでおさえてください。

 ただし、過去問題だけで午後Iで扱われる可能性があるすべてのネットワーク技術を網羅することはできないでしょう。過去問題で扱っているネットワーク技術に関連した技術についても、基本的な仕組みをしっかりと把握しておくことが重要です。いろんなネットワーク技術の基本的な仕組みをおさえておくことが午後I問題の重要な対策です。また、これは午後II問題の対策にもなります。

午後IIの傾向と対策

概要

 ネットワークスペシャリスト試験の午後II試験は、記述式問題です。2問中1問選択して解答します。次の表に午後II試験の概要をまとめています(表4)。

表4●午後IIの概要
表4●午後IIの概要

 それぞれの問には、設問が4~6つあります。午後II問題は問題文が非常に長くなっています。問題冊子のページ数で約10ページにもわたります。

傾向と対策

 午後Iの問題は、基本的に1つのネットワーク技術にフォーカスして設問が作られています。それに対して、午後IIの各問は、幾つかのネットワーク技術を組み合わせたシステム全体を考える設問が作られています。

 また、システム移行のポリシーや障害時などの運用体制といった技術的な側面以外の設問もよくあります。過去3年の午後II試験で扱っている主な内容をまとめたものが次の表5です。

表5●午後IIで扱う主なネットワーク技術
表5●午後IIで扱う主なネットワーク技術

 このように、午後II問題はシステム全体について設問ごとにいろんな技術や側面について問われています。午後II問題で解答するために重要な点は、次の2点です。

・ 技術的な仕組みをしっかりと把握していること
・ 問題文をよく読むこと

 この2点をおさえるために効果的なのは、やはり過去問題です。過去問題を考えることで技術的に理解が不十分な点が明らかになるでしょう。理解が不十分な技術の仕組みをしっかりと復習してください。このことは、午後Iでも午後IIでも共通です。

 比較的新しい技術についても注意が必要です。以前のネットワークスペシャリスト試験では、標準化されてある程度枯れた技術についての出題が中心という印象でしたが、その傾向が変わってきているようです。

 ITproサイトなどでよく目にする比較的新しい技術についてもその仕組みを把握するようにしてください。最近ではクラウドが注目されているので、クラウドに深く関わってくるサーバ仮想化技術や冗長化、パフォーマンス向上、認証技術、SSL-VPN/IPSec-VPNなどの技術は要チェックです。

 そして、過去問題を通じて、問題文のポイントを的確に把握できるようにしてください。前述のように、午後II問題はかなり長文です。長文の問題を最初から最後まで読んでいると、時間が無くなりますし、ポイントはあやふやになってしまいます。

 午後IIで問われる技術的な内容は、かなり高度な機能や仕組みにまで及んでいることが多いです。そのような高度な機能や仕組みについては、問題文に概要が記述されています。

 技術の詳細な仕組みを知らなくても、解答は問題文にある記述をベースに必要な文字数にまとめれば十分である場合がほとんどです。また、運用管理やポリシーの検討などについての設問も問題文の記述をベースに解答をまとめることがほとんどです。

 設問に関連する問題文の記述を的確に把握することが重要なのです。各設問は、問題文のどの部分に対応しているかが明示されています。過去問題を解答するときには、先に設問を読み、それから該当する問題文を読んで重要な部分を判断するという練習を行ってください。

<対策まとめ>
・過去問題が対策の基本
・午前I/午前IIは過去問題を暗記するぐらい繰り返す
・午後Iは、過去問題で理解が不十分な技術を明確にして、その技術および関連する技術の仕組みをしっかりと勉強する
・午後IIでも、過去問題で理解が不十分な技術を明確にして、その技術および関連する技術の仕組みをしっかりと勉強する
・比較的新しい技術についても要注意。特にクラウドに関連する技術について仕組みを把握する
・午後IIでは、さらに過去問題で設問についての重要な問題文の記述を的確に見つけられるように練習する
Gene(ジーン)
ネットワーク技術に関するフリーのインストラクタ、テクニカルライターとして活動中。著書に『3週間完全マスター ネットワークスペシャリスト 2012年版』、『Cisco CCNA ICND1テキスト』、『Cisco CCNA ICND2 テキスト』、『Cisco CCNP ROUTEテキスト』(以上、共著、日経BP社刊)などがある。