新事業、新サービスを開発する際に必要なものは何か。最近注目を集めるコミュニケーションサービス「LINE」やキュレーション・プラットフォーム「NAVERまとめ」などの開発に携わったNHN Japan執行役員の島村武志氏(写真1)に、新サービス開発の実践方法、リーダーの役割を聞いた。

(聞き手は菊池 隆裕=ITpro編集)


新しいサービスや事業を始めるときに意識しているのはどんなことでしょうか。

 最初の戦略的な立場が肝になります。最終的なゴールがどれくらいの規模になるのかイメージできないと、どう投資すればいいか分かりません。

最大の可能性から逆算的に今やることを考える

写真1●NHN Japan執行役員の島村武志氏
「NAVERまとめ」「LINE」の企画に携わった

 私たちが開発したNAVERまとめやLINEは、無計画に始めたわけではなく、獲得できる最大のパイを最初に考え、逆算的に今やることを考えました。LINEそのものが最初から考えられてきたというよりは、漠然と「基盤を作らないといけない」というゴールがあって、そのゴールに向けた試行錯誤の歴史だといえます。決して、アイデアを起点に育てたという道筋ではないのです。

 ゴールが定まれば、そこまでの道筋は無限にあります。ゴールのイメージが大きければ大きいほど、最初は試行錯誤に時間を割かないといけないと考えています。

事業計画でよく言われるロードマップと、島村さんの言うゴール設定は違うものですか。

 違いますね。新規事業はそもそも何をKPIにすべきかどうかすら分からないものです。ユーザー数が大事なのか、ページビュー(PV)か、APRU(ユーザー当たりの月間平均支払額)か、あるいは収益性か。これはケースバイケースです。

 最初の手ごたえがあって、初めて次に打つ手や目標が決まります。掘り進められそうなのか、あるいは他のことを始めるべきなのか、最初の反響を計測することで見えてくるでしょう。もし兆しがみえたとしたら、それがどのような兆しなのかを判断して、次の計画が見えてくることになります。

 7月2日に行ったLINEの発表会では、報道関係者からの質問として「数年後の売り上げの目標はどれくらいか?」、「Facebookをいつ超えるのか?」といったものがありました。日本企業的な質問だなと感じました。

 私たちからすると、目の前の最適解を追い求めるだけ、ということになります。今のベストがなくて、1年後のベストを検討することはできません。もう少し短期の計画をみているということをずっとやっています。それが思い通りであれば、初めて次があるというステップです。