今回のテーマであるモーションとアクションの混同は、プロジェクトの推進では頻繁に起こりがちなことです。日本でも「手段の目的化」などと言われて戒められているので、肝に銘じておきたい教訓です。(ITpro)

 アントレプレナーの最も大切な強みの一つは、執拗に目標を追求することです。しかし、これが多くの人たちとどのように違うのかを分かっている人はほとんどいません。他の人たちがどのように問題を解決するのかを見ることで、アントレプレナーとの違いを考えてみました。

「進捗報告書」と「状況報告書」

 先週、私が妻のオフィスにちょうど訪れていたとき、妻は大学に行っている娘と電話で話をしていました。娘は、受講中のクラスの一つで苦労していて、私たちに助けを求めていました。その進捗があったのか、あるいはないかを気に掛けて電話してきたのです。

 娘は、大学の授業援助センターに対して、メールで数回にわたって支援を求めました。それに加えて、クラスの教授と面談しようとしてました。「行き詰まったときは、助けを求めなさい」という、私たちが子供に教えた「ユーリスティック」(発見的に学ぶ方法)を実践していたので、それは良いことだと思いました。私の興味をひいたのは、娘の努力にもかかわらず、誰も彼女に返事をよこさなかったことです。

 娘は、自分がやるべきことはすべてやったと思っており、その結果を待っていました。私は、娘がモーション(単に動きを起こすこと)とアクション(目標を持って行動すること)を取り違えていることに気付きました。この状況をみて、娘が生まれる数年前に、私の直属の部下と交わした会話を思い出しました。

 当時私が在籍したアーデントのマーケティング部門では、自社のスーパーコンピュータ用のアプリケーション・ソフトウエアを外部から購入する責任がありました。私たちの任務は、ソフトウエアベンダーに対して、私たちのマシン固有のアーキテクチャーにアプリケーションを移植するように説得することでした。

 私たちのコンピュータは、並列アーキテクチャーを備えた最新機の一つであり、ソフトウエア用のコンパイラーは、自社のコンピュータのベクター・アーキテクチャーの特徴に最適化されています。特殊な知識を必要としたため、ソフトウエア会社を説得するのは容易ではありませんでした。加えて、私たちのコンピュータを使用している顧客は皆無でした。私は、必要と思われる他社アプリケーション・ソフトのすべてを、自社のコンピュータに移植してもらうため、パートナー候補であるソフトウエア企業からマーケティング担当副社長を採用しました。彼の入社後、彼とは毎週のようにソフトウエア会社との進捗情況を話し合いました。

私の考え方は他の人とは違う

 私は今でも覚えていますが、私は自分が進捗具合に関して、他の人たちとは違った考え方をするのだと気付きました。その時の会話は 以下のようなものでした。
私:ジム、アンシスとのソフト移植の進捗はどうかな?
ジム:うまくいっているよ。何度も電話を入れたからね。
私:ナストランの移植は?
ジム:良好だ。来月返事をすると言っている。
私:ダイナ3Dとは?
ジム:大変うまく行っている。私たちの会社は、彼らのリストに載っているよ。

 その他の進捗報告も同じようなものでした。

 このような報告を数週間聞いた後、私はミーティングを中止しました。彼自身は仕事が順調に進んでいると思っていましたが、私は、彼は何も成し得たとは思っていませんでした。

 なぜでしょうか。