今回は、TOC思考プロセスの全体像を紹介する。前回、TOC思考プロセスは、組織・システムにおける問題の根本原因を「制約」と捉え、その制約を解消する方法を考えられるようにする、体系的なアプローチであることを記した。今回はそのアプローチについて、詳しく紹介していく。

三つの問いに答える

 TOC思考プロセスでは、以下の三つの質問に答えることがゴールとなる。それは「何を変えるのか?」「何に変えるのか?」「どう変えるのか?」である。これらの質問への答えを一つの体系的なモデルとして整理したものを「U-shapeモデル」と呼ぶ(図1)。

図1●U-shapeモデル
図1●U-shapeモデル
(オーエッド・コーエン氏の論文「"U-shape"によるシングルプロジェクト環境の問題分析CCPMソリューションの構築」を参考に筆者作成)
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 U-shapeモデルとは、後述するTOC思考プロセスのツールをすべて論理的にひも付けた、いわば変革のロードマップである。このロードマップの論理構造に沿って質問に答えていくことで、現在の問題と根本原因となる中核問題、解決策の方向性、そしてその解決策のアクションプランを得られる。

 U-shapeモデルの左側は、過去を表し、現状の変えたい問題を追究するパートである。他方、U-shapeの右側は未来を示し、どのように変えていくか、具体的なアクションに落としていくパートである。そして、過去と未来をつなぐU字の中間点は、思い込みを打破し、新しい未来を生み出すための転換を行う箇所である。

 U-shapeモデルを利用することのメリットは、変革のロードマップとTOC思考プロセスのツールの関連性を常に意識しながら問題解決を図っていけることにある。各ツールのアウトプットをこのU-Shapeモデルの中に記載し、可能な限り多くの人が見られる位置に、できるだけ大きく張り出しておくのはU-Shapeの良い使い方だろう。

 組織やプロジェクトにおける問題や取り組む解決策の方向性、およびそれらの検討経緯の共有につながるだけにとどまらず、メンバー内で自発的に議論が始めるきっかけにもつながるはずである。