著者は大手広告代理店の博報堂で、マーケティングやコミュニケーションの方法論を研究する中谷吉孝氏ら。「気づき」がビジネスはもちろん、ボランティアや趣味など生活のあらゆる場面を変えると説く。この気づきを生む思考の場を「共同脳空間」と位置付け、活性化させる言葉などを解説している。

 ある研究機関は博報堂の打ち合わせのほぼ7割は「雑談」であると結論付けたそうだ。この雑談こそが共同脳空間で、気づきを生み出す秘密があると著者は説明する。

 本書では具体例として博報堂におけるいくつかの会議が登場する。一例が、ある携帯電話会社の新ブランドの販売キャンペーンの打ち合わせだ。そこで「関係ないけど」という言葉が登場する。一般的に「関係ないけど」は、打ち合わせの本来の趣旨から外れようとしていると受け取られる。時間の無駄とばかりに軌道修正してしまうことも多い。

 著書はこの言葉が「カンフル剤」になると指摘する。「新たな気づきというものは、リニアな既成のロジックからは生まれてこない」ためだ。新規事業開発など既成概念から思考を解き放ちたいと考えるビジネスパーソンにお薦めの一冊だ。

気づく仕事

気づく仕事
博報堂 研究開発局著
集英社発行
1260円(税込)