前回は、海外(特にアメリカ)における企業のソーシャルメディア活用が、特にビジネス方面において、ともすれば実状以上に進んでいるという印象を受けがちになっていると書いた。これは、海外から伝わってくる斬新な事例を、しかも断片的に垣間見てしまうことが多いゆえである。

リソースをシフトすることへの採算性を疑問視するマネジメント層

 海外の現場で実際に耳にする生々しい会話の中には「いかにしてマネジメント層からの深い理解を得るか」といったような、まるでどこかで聞いたことがあるようなトピックが、今もなお渦巻いている。海外の企業のマネジメント層であっても、いまだにソーシャルメディアという、言うなれば新手のものに対して、半ば「拒否反応」を示しているケースは決して少なくないのだ。

 そうした「拒否反応」をもたらす最大の理由は、自分たちがそのビジネスをソーシャルメディアに向けてシフトさせることによる採算性にある。言い換えれば、予算や人員をソーシャルメディア方面に割くことが、本当に「割に合う」ものなのか、ということを決めかねているからだ。これも日本での状況とあまり変わらないだろう。

 もちろん、一部の施策においては、半ば偶発的な外的要因も相まって、結果的に驚異的なパフォーマンスを叩き出すケースもある。だが、マネジメント層は、そうした事例の評価については慎重で、ほとんどが偶発的な外的要因によってもたらされたことを、ある意味きちんと理解していると言ってもよいだろう。

 一方で、現場の担当者レベルにおいては、ソーシャルメディアを活用することによって、これまで見たことのない可能性や、ビジネスインパクトが存在することを(自分を含め)信じている。少なくとも何らかの形でトライをしてみなければ、その可能性はゼロのまま変わることはない、ということも熟知している。

 多くの場合、マネジメント層と現場のギャップ、あるいは温度差は、こういったところから生まれてくる。今回は、その温度差を埋めていくために、どうしたらよいのかを考えてみたい。

自分たちのビジネスに対する効果を具体的に説明することが必要

 以前、本連載でも少し触れたように、現場から働きかけなくてはならないアクションについても、もう少し洗練されたものが必要となってくる。一方マネジメント層においても、もう少しソーシャルメディアという新手のものに対して、自分たちのマインドセットを的確に合わせていかなくてはならない。

 まず現場サイドにおいて、求められてくるアクションについて、もう少し深堀りしてみよう。

 以前にも言及したが、ソーシャルメディアがもたらすイノベーティブな施策、そして、その延長線上に位置してくるビジネスインパクトの可能性について、明確に示すのが現場にとっては重要である。これらをきちんと、自分たちの現在進行形のビジネスの文脈に沿った形で話をしていかなくてはならない。これに尽きるのではないか。

 「Facebookがすごい」「Twitterがすごい」、さらには「ソーシャルメディアがすごい」という話だけが強調され、その説明するために引用するのが他社事例という人が多いのではないか。これは非常に簡単に要約すれば、「ソーシャルメディアはすごい。他社も使っている。だからウチもやりましょう」に終始している状態である。

 改めて文章として書くと当たり前だが、これではマネジメント層は動かないし、理解を示すこともない。それ以前に何に対して理解を示せば良いのか、その本題がごっそりと抜け落ちて終わっている状態なので、そもそも理解の示せない。外部のエージェンシーが、最初の営業で説明する話であればまだしも、インハウスのマーケターが、これをやってしまっては、話は前に進みようがない。

 本当に説明しなければならない話は、その先の「これらのソーシャルメディアを、自分たちのビジネスのどの部分にどのように使う(組み込む)ことで、そのビジネスが、どんなポジティブな効果をもたらすのか」ということを、あくまでも抽象的ではない形でマネジメント層に説明しなければならないのだ。