BYODの「ルールを作る」ことは、企業と個人の責任範囲を明確にすること、BYODでする仕事をやりやすくすること、BYODを推進するという意思を表明すること、などにつながる。

ルールなき黙認はリスクを高める

 「ルールを作らない」ことは、私物デバイスの持ち込みを黙認すること、企業秘密漏洩のリスクが高まること、プライバシー侵害のリスクが高まること、などにつながる。ルールを作らない状況で、なし崩し的にBYODが開始されると、会社も従業員も守れず、従業員の協力も得られないのである。

 実際に、従業員が私物デバイスで業務メールを送受信することはある。これが、私物デバイスを業務で利用するための制度およびルールを制定していない企業においてだとしたら、それは企業が「黙認している」ということである。この現状で、従業員に対して休日の仕事を強要して労働問題に発展したり、私物デバイスの盗難や紛失などによる情報漏洩事故が発生したりした場合、会社の責任はより重くなる恐れがある。

 また、これまで私物禁止、モバイルデバイスの持ち出し禁止などを制度およびルールとして制定していた企業において、BYODを開始しようとしたとする。この場合、その制度、ルールおよび考え方までも変えなければならず、本質とは異なる高いハードルに阻まれてBYODの検討すら進まないという現実がある。

 「禁止していたものを許可する」という見方は本質ではない。禁止することで目を背けてきた現実を見つめなおし、これまで禁止にしてきたことで「できていたこと」「できていなかったこと」を明確にしたうえで、どう変化すべきかを検討することこそ本質である。

 その本質を理解し、ハードルを下げることは非常に時間がかかる。しかし、粘り強く、BYODの制度とルールのあるべき姿を考えなければならない。会社と従業員の両方を守るために、高い安全性や効率性、利便性も考慮した適切な制度とルールを規定として制定することこそが重要である。

 では、BYOD導入に向けてどのように「ルールを作る」のかという観点から、BYOD導入の実務ポイントを紹介する。

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図●社内規定の整備例
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