スモールコアサーバーの能力は、プロセッサの進化に依存する。新興勢力のアームと古参のインテルが技術開発を競い合うことで、今後、スモールコアサーバーの性能は飛躍的に伸びそうだ(図1)。

図1●ARMコアの性能ロードマップ
将来はデータベースサーバーや科学技術計算の用途も狙う
図1●ARMコアの性能ロードマップ。将来はデータベースサーバーや科学技術計算の用途も狙う
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 そうなると、1ラックに数千サーバーという高集積性や周辺機器の共有化などのアーキテクチャーはそのままに、アプリケーションサーバーやデータベースサーバーといった用途でも使えるようになる。

 スモールコアサーバーの市場を一気に制覇しようと意気込むのがアームだ。コア当たりの処理性能が2倍となる新型ARMコア「Cortex-A15」を搭載したプロセッサが2012年から2013年に登場する。

 32ビットコアながら、メモリー空間を40ビット(約1テラバイト)まで拡張できる機能を備えている。Javaを高速に実行するために、浮動小数点演算性能も強化される。

 さらに2014年には、64ビット版のARMアーキテクチャー「AArch64」を採用したプロセッサが相次ぎ登場する。48ビットのメモリー空間(約256テラバイト)を使えるほか、暗号化回路を標準で備える。アームから先行してライセンスを受けた米アプライド・マイクロ・サーキッツが64ビット版ARMコア搭載のSoCを開発中で、2012年後半のサンプル出荷を目指す。2014年ごろには他社も追従するとみられる。

 現状、ARMプロセッサで動作するサーバーOSやミドルウエアはほとんどない。だが、この問題も2014年までには解消しそうだ。2012年夏ごろにはLinuxカーネルのメインラインがAArch64に対応する見込みだ。

 ARMプロセッサ向けLinuxカーネルなどを開発する非営利組織「Linaro」は、サーバー向けソフトウエアやドライバーの開発を表明している。HPはMoonshotプロジェクトに、米レッドハッドなどのソフトベンダーを引き入れ入れるなど、エコシステムの拡充に注力している。米マイクロソフトもWindowsをARMに対応させることを表明している。

 商用のミドルウエアやパッケージソフトの多くは、プロセッサ数やコア数で課金しているため、現時点でスモールコアサーバーを利用するとライセンス料金が高騰する課題がある。だが、スモールコアサーバーが普及することで、ミドルウエアやパッケージメーカーは、ライセンス体系の見直しを迫られることが考えられる。

インテルはAtomとXeonで対抗

 サーバー市場進出への意欲を隠さないアームに対し、インテルはAtomプロセッサやXeonの省電力版などで迎え撃つ。

 先鋒は、省電力に特化したXeonプロセッサ「Xeon E3 1220L」だ。消費電力は20W。100W前後が主流のXeonラインアップのなかでは小さい。

 価格面でもARMプロセッサに対抗する。複数のサーバーメーカーの関係者が、「2011年下期に入ってから、インテルが低消費電力版Xeonの価格を2割から3割下げてきた」と証言する。

 日立製作所は2012年2月6日、5Uサイズの筐体にサーバー40台を収容できる「HA8000-bd/BD10X2モデル」の省電力版に、同プロセッサを採用した。「Xeon搭載のPCサーバーでは最高の集積度を誇る」(日立製作所 サービス・ソリューション本部 ビジネス統括部の藤田あずさ主任技師)。

 スモールコアサーバーが本格的に普及するのは、2013年から2014年ごろの見込みだ。各社が技術開発を競い合うことで、クラウドやデータセンターのインフラを大きく様変わりさせるスモールコアサーバーが、今後、続々と登場するのは間違いない。