写真1●中国移動のXi Guohua会長
写真1●中国移動のXi Guohua会長
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 Mobile Asia Expoは、通信事業者として世界最大のユーザー数を誇る中国移動による基調講演で幕を開けた。2012年3月に新たに就任したばかりのXi Guohua会長は、「TD(Time Division)-LTEがグローバル・スタンダードになることを確信している」と述べ、TD-LTEのエコシステムの拡大に強い自信をにじませた(写真1)。「現在実施中のTD-LTEトライアルは順調。2012年末までに2万局、2013年末までに20万局のTD-LTE基地局を設置する」と今後の展開を説明した。

「TD-LTEの周波数コストはLTE FDDの約1/5」との発言も

 今回のMobile Asia Expoは開催地が昨年の香港から、TD-LTEのおひざ元である中国の上海に移ったこともあり、参加各社による“TD-LTE推し”の傾向が強く感じられた。その代表格は地元勢の中国移動、ZTE、大唐電信である。また、中国移動やソフトバンクモバイルなどが加盟しているTD-LTEの推進団体「GTI(Global TD-LTE Initiative)」の会合がMobile Asia Expoに併設する形で行われ、“TD-LTE推し”を補強していた。

写真2●ZTEのShi Lirong社長
写真2●ZTEのShi Lirong社長
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写真3●大唐電信の展示ブース
写真3●大唐電信の展示ブース
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 中国移動、ZTE、大唐電信の3社は口をそろえてFDD(Frequency Division Duplex)方式のLTE(LTE FDD)に対するTD-LTEの優位性を強調。中国移動のXi会長と同じセッションに登壇したZTEのShi Lirong社長は「ますますモバイル中心になりつつあるユーザーの需要に対応するための最適な通信方式はTD-LTEだ。TD-LTEの周波数コストはLTE FDDの約1/5であり、最も費用対効果の高い通信方式である」との主張を展開した(写真2)。

 また、展示会場に目を移すと、北京を本拠にする通信機器関連のメーカーである大唐電信の展示ブースは、TD-LTEを中心としたTDD関連ソリューション一色だった(写真3、関連記事:TD-LTEの“本場”、中国移動や大唐電信がデモ、商用化は2014年ころ)。

写真4●Bharti AirtelのSanjay Kapoor CEO
写真4●Bharti AirtelのSanjay Kapoor CEO
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 さらに、基調講演終了後のパネルディスカッションでは、インドのコルカタでTD-LTEサービスを開始したBharti AirtelのSanjay Kapoor CEOがTD-LTEを採用した理由を説明。「3G環境があまり整っていないインドでは、音声サービスの面では問題なくてもデータ通信速度の面で難がある。TD-LTEでは40Mビット/秒を実現できるため、光回線など固定の代替としての利用が期待できる」と述べた(写真4)。

「TD-LTEは最終的に世界の人口の46%をカバーする」

 LTE FDDとTD-LTEの技術面での主な相違は、前者が上りと下りの通信にそれぞれ別の周波数を割り当てるのに対し、後者は上りと下りの通信に同じ周波数を使い、時間で切り替えて処理する点だ。回線交換による音声通信よりもデータ通信がメインになった今日では、上りに対して下りのデータ量が圧倒的に多い。これが、下りの通信に比較的多くの周波数リソースを割り当てられるTD-LTEが有利とされる所以だ。

 グローバルな視点で見ると、現在稼働中のLTEネットワークの大半はLTE FDDを採用している(例えば、NTTドコモの「Xi」はその一つ)。しかし、英調査会社Ovumによると、2016年までにTD-LTEの比率はユーザー数ベースで全体の約25%に達するという。これだけでもインパクトのある数値だが、ZTEのShi社長はさらに強気で、「TD-LTEは最終的に世界の人口の46%(約30億人)をカバーするようになる」との見通しを示している。