2012年6月20~22日にかけて中国・上海で携帯電話関連の展示会・カンファレンス「Mobile Asia Expo(MAE)」が開催された。主催は携帯電話の国際的な業界団体であるGSMA。MAEは、世界最大の携帯電話関連の展示会・カンファレンス「Mobile World Congress」の主催者であるGSMAが、有望市場である中国・アジアに向けて展開するイベントである。会場も昨年の香港から上海へと移し、ついに中国本土に進出した形だ。

写真1●ファーウェイ・テクノロジーズの展示ブース
写真1●ファーウェイ・テクノロジーズの展示ブース。端末のみの展示を展開
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 それだけに今回のMAEには、注目が集まった。日本からは6月にNTTドコモの代表取締役社長に就任したばかりの加藤薫氏が基調講演に登壇するといった話題もあったが(関連記事:ドコモ加藤新社長が“海外デビュー”、上海Mobile Asia Expoで基調講演)、展示会そのものは比較的こじんまりとしており、中国のファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)、ZTE(中興通訊)といった“地元”大手企業の存在感が際立った形だ(写真1)。そこで第1回は、ファーウェイ・テクノロジーズとZTEに焦点を当て、MAEの期間中に見た両社の存在感を浮き彫りにする。

ファーウェイ、ZTEいずれもTD-LTEの主要機器サプライヤー

 ファーウェイ・テクノロジーズとZTEはいずれも中国・深センに本社を置く通信機器メーカーである。ファーウェイ・テクノロジーズは従業員が100%株式を保有するプライベートカンパニー、ZTEは深センおよび香港の証券取引所に株式を上場する上場企業である。両社とも世界140以上の国・地域で事業を展開しているグローバル企業でもある。

 その規模感は日本にいるとピンとこないが、ファーウェイ・テクノロジーズは、スウェーデンのエリクソンに次いで売り上げベースで世界第2位の通信機器メーカーであり、ZTEは2012年第1四半期の携帯電話出荷台数で世界第4位のメーカーである。両社ともに端末から基地局、インフラの運用・管理まで幅広く展開している点は共通だ。

 日本では、通信カードやモバイルルーター、キッズケータイなどで知られるが、例えばファーウェイ・テクノロジーズは、ソフトバンクグループのWireless City Planning(WCP)が展開するTD-LTE互換の高度化XGP(AXGP)ネットワークの構築を受注し、現在ソフトバンクモバイルがWCPのMVNOとして「Softbank 4G」の名称でAXGPの商用サービスを展開中だ。この事例に関しては、TD-LTEの大規模商用サービスとして、MAE期間中の基調講演やカンファレンスなどで幾度となく話題となったことを付記しておく。

写真2●中国移動の展示ブース
写真2●中国移動の展示ブース。TD-LTE関連の機器も展示されていた
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 ファーウェイ・テクノロジーズおよびZTEは、いずれも中国移動が中国主要都市で展開しているTD-LTE試験サービスの通信機器サプライヤーである。中国移動によると、中国国内では現在、上海、広州、杭州、南京、深セン、アモイの6都市で試験サービスを展開中であり、これに加え、同じく中国の大唐電信が主体となって北京で試験サービスを実施している。MAEのブースの中国移動の説明員によると、商用化は2014年ころになるという(写真2)。

 各都市のTD-LTE対応機器のメインプロバイダーは、上海が仏アルカテル・ルーセント、広州がZTE、南京が大唐電信、深センが中国ファーウェイ・テクノロジーズなどとなっており、地域ごとに各ベンダーを割り振っている状況だ。MAEでは多くのTD-LTE関連の講演や展示が見られたが(関連記事:TD-LTEの“本場”、中国移動や大唐電信がデモ、商用化は2014年ころ)、詳細は第2回、第3回で解説する。いずれにせよ、ファーウェイ・テクノロジーズとZTEの両社は、中国の“国策”の側面もあるTD-LTEをグローバル展開する役割を担っているともいえる。