写真1●Red Hat CTO Brian Stevens氏
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 「オンプレミスとパブリッククラウド間を容易に相互にマイグレーションできるようにすることがRed Hatのゴールだ」(Red Hat CTO Brian Stevens氏、写真1)。Red HatのIaaS管理フレームワーク「CloudForms」とPaaS「OpenShift」の詳細を見てみると、その特徴は、ともにすべてオープンソースソフトウエアであることと、オンプレミスとクラウドで同じ環境を提供するハイブリッドであることだ。

Cloud Forms :
AmazonやOpenStackなど異種クラウドを統合管理

 CloudFormsは、異種クラウド環境での仮想生成や削除、ポリシーに基づいた自動運用やユーザー管理、課金などの管理を行うことができるフレームワークである(図1)。Red Hatの仮想マシン環境であるRed Hat Enterprise Virtualizationだけでなく、Amazon EC2上のXen、VMwareのvCenter上のESXi、OpenStack上のRed Hat Enterprise Virtualizationといった、異種仮想マシンが混在する環境を管理できる。
図1●CloudFormsの構成
図1●CloudFormsの構成
異種クラウド環境を管理できる
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写真2●CloudFormsの管理画面
Webブラウザからクラウドを管理
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 また、VMwareの仮想マシンイメージをRed Hat Enterprise Virtualizationが利用するKVMのイメージに変換して、CloudFormsにインポートするといったことも可能という(Red Hatによるデモ)。

 異種間のクラウド管理を可能にしているのが、Red Hatが支援しているオープンソースプロジェクトの「Apache Deltacloud」である(図2)。各クラウドプロバイダーの管理API(Application Programing Interface)の上にその違いを吸収するレイヤーをかぶせ、統一APIで管理できるようにするプロジェクトだ。

図2●Deltacloud
図2●Apache Deltacloudの概要
クラウドごとの管理APIの違いを吸収し、共通APIで操作
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 現在対象となっているクラウドサービスおよびクラウド管理ツールはAmazon EC2、Eucalyptus、富士通 FGCP、IBM Smart Business Cloud、GoGrid、OpenNebula、Rackspace、Red Hat Enterprise Virtualization、RimuHosting、Terremark、VMware vSphere、OpenStack。ストレージサービスではAmazon S3、Eucalyptus Walrus、Rackspace CloudFiles、Microsoft Azure、Google Storageと幅広い。各サービスで実装済みになっているAPIは、Apache Deltacloudのページに一覧表になっている。

 このようにオープンソースと標準APIによって「ロックインしない環境を提供する」(Red Hat 社長兼CEOのJim Whitehurst氏)というのが、Red Hatの方針だ。OSで成功を収めたこの方針をクラウドでも堅持しようとしている。

 2012年6月の「Red Hat Summit and JBoss World 2012」では、オープンソースのクラウド基盤であるOpenStackへの言及が目立った。OpenStackは、米航空宇宙局(NASA)の仮想化基盤管理技術(Nova)と、Rackspaceの分散オブジェクトストレージ技術(Swift)をベースしたオープンソースのクラウド基盤ソフトウエアである(関連記事)。

 OpenStackは、LinuxディストリビューションとしてはUbuntuをリファレンス環境としているが、Red Hatは2012年4月、OpenStack Foundation発足時に参加、OpenStackへの支持を表明した。Red Hat Summit and JBoss Worldで行われた記者会見では、OpenStackを利用したクラウド環境を顧客に試験導入していることも明らかにした。

 既存の顧客が“地続き”でオンプレミスからクラウドに移行できるようにすることもRed Hatの方針だ。Red Hat Summit and JBoss World 2012では、CloudFormsとRed hat Enterprise Virtualizationをセットにした「Red Hat Hybrid IaaS」を発表した。発表では米VMwareのクラウドサービスであるvSphereに比べ価格面で優位であると主張。Red Hatが得意とするオンプレミスのユーザーにクラウドでもRed Hatを採用しやすいよう、製品をパッケージ化した。