ジュピターテレコム(J:COM)は4月24日に発表した中期事業計画で、事業環境の変化に対応したケーブルテレビ事業の商品力強化、メディア事業の再編といった戦略を打ち出した。「J:COM Everywhere」を旗印に、新規事業やM&Aにも積極的に取り組む。2011年度の3691億円から2015年までに4500億~5000億円への成長を目指す。代表取締役社長の森修一氏に事業戦略を聞いた。(聞き手は本誌編集長=田中正晴、記者=滝沢泰盛)

図 中期事業計画の成長戦略
ケーブルテレビ事業
(1) RGU獲得重視から世帯純増・世帯ARPU重視へ
(2) 未開拓市場の効率的獲得の推進
(3) 顧客ニーズに沿った商品競争力の強化と多様化
(4) 既加入者サービスの向上、ユーザビリティの改善
(5) KDDIグループ、住友商事グループとの協業のさらなる推進

メディア事業
(1) 独自コンテンツの保有・囲い込み
(2) チャンネル事業の強化
(3) コンテンツ配信事業(プラットフォーム)強化
(4) 広告事業強化

中期事業計画の説明会では、インターネットを軸としたユーザー獲得を特に強調していたが、具体策はどうなるのか。

 我々の調査によると、特に20歳代~40歳代半ばの層は、電話や多チャンネルサービスにJ:COMを使っていてもブロードバンドは他社のサービス、というケースが目立つという課題がある。こうした層に対して、もっとケーブルインターネットの認知を高めていきたい。

 例えば、キャラクター「ざっくぅ」を使ったプロモーションはその一環である。イベント会場などでざっくぅのマスコットを配ると非常に反応が良く、手応えを感じている。3月にもこのキャラクターを使ったテレビコマーシャルを実施したところ、コールセンターに新規加入に関する申込みや問い合わせが2割程度増えるなど、効果は大きかった。

ケーブルインターネットの存在感を高めたい

 ZAQブランドを展開する上で工夫しているのは、できるかぎりJ:COM色を薄めるということだ。例えば、30秒のCM映像の中に、J:COMのロゴが表示されるのは数秒しかない。

 その狙いは、ケーブルインターネット全体の統一したイメージとしてZAQを浸透させたいということにある。首都圏では、JCN(ジャパンケーブルネットワーク)、イッツコムの2社にこのブランドに相乗りしてもらいたい。両社とも既存のサービスブランドがあり、調整は必要だろう。だが両社の社長にざっくぅを見ていただくと、この考え方に興味をもっていただいている。

 元々ZAQブランドは関西マルチメディアサービス(現テクノロジーネットワークス)が使っていたもので、関西の10局前後のISPサービスは以前からこれに統一されている。

 これと同様に首都圏でもキャラクターだけでも統一して展開し「首都圏のどこに住んでいてもケーブルインターネットはZAQ」というイメージをしっかり作っていきたい。

しかし、一般ユーザーにとってはブロードバンドと言えば通信事業者のFTTHサービスの印象が強く、販売力も大きい。どう対抗するのか。

 確かに、事業規模が大きい通信事業者に対して、料金面だけでの競争では不利だ。

 特に量販店などでは、家電の購入時に同時加入すると白物家電が買えるほどのキャッシュバック攻勢を派手に展開しており、それにまともに対抗して、料金のたたき合いになるのは避けたい。だが、そうしたキャッシュバックや継続契約による割引キャンペーンは、契約期間が満了するタイミングがある。我々は今後、そうしたユーザーを戸別訪問して、ネットに加えて多チャンネルや電話のトリプルセットでトータルのお得感を提案し、ひっくり返していきたい。