米マイクロソフト(MS)が2012年6月、タブレット端末やスマートフォンなどポストPCの戦略を大きく転換した。
まず6月18日(米国時間)に、自社開発のタブレット端末「Surface」を発表した。「Winodws 8」を搭載するモデルと、ARMプロセッサ用の「Windows RT」を搭載するモデルがあり、2012年内に予定するWindows 8のリリースと同時に発売する。長年、PCメーカーにOSをOEM提供する水平分業を手がけてきたMSが、タブレット端末に関しては、MS自身がハードも含め開発する垂直統合モデルを採用した(図)。
Surfaceは、タッチ操作のタブレット端末としてだけでなく、キーボード操作のPCとしても利用できる。保護カバーの内側がキーボードになっており、本体を背面のスタンドを使って支えると、ノートPCのような形状になる。Surfaceは薄型WindowsノートPCとも競合する製品だ。
6月20日には、スマホ用の新OS「Windows Phone(WP) 8」を発表した。現行のWP7.5までの「CEカーネル」からWindows 8/RTと同じ「NTカーネル」に切り替えた。
カーネルが同じであるため、WP8ではWindows 8/RT用の「メトロスタイルアプリ」が動作する。PC、タブレット端末、スマホで同じメトロスタイルアプリを動作可能にすることで、MSは開発者を自社陣営に呼び込む。
WPのカーネル変更は、フィンランドのノキアなど既存のWPメーカーには痛手となりそうだ。
既存WP端末のOSは、WP8にアップグレードできない。またWP7.5では、今後主流となるメトロスタイルアプリは動かない。既存のWP端末は、OSのアップグレードができない上に、アプリの供給も少なくなる。今後は販売の低迷が避けられないだろう。
さらに米国野村証券のアナリストであるリック・シャーランド氏は6月20日、「MSは独自のWP8端末発売に向け、委託製造業者と共同開発を進めているもよう」との投資レポートを公表した。
MSによる戦略転換の背景には、WPの不振がある。米ガートナーが発表した2011年第4四半期のスマホOSの世界シェアは、Androidの50.9%、iOSの23.8%に対して、WPは1.9%に過ぎない。従来と同じ戦略では競合に追いつくのは難しい。MSは、既存パートナーとの関係悪化もいとわない「背水の陣」を敷き、ポストPCでの逆転を目指して動き始めた。