ONS2012では日本勢も存在感を見せていた。OpenFlowコントローラー、スイッチを世界初で商用化したNECは矢野薫取締役会長自らがキーノートに登壇。NTTコミュニケーションズも目立つデモを披露していた。このほか会場では、データセンターやクラウド以外にも活用シーンが広がっている様子が見られた。
キーノートに登壇したNECの矢野会長は、「SDNはもう準備万端」として、同社によるSDN/OpenFlowの豊富な導入事例を紹介した。
NECのSDN/OpenFlow製品は、学術機関からデータセンター事業者、企業ネットワーク、通信事業者など、10団体以上が導入済み。導入前のトライアルを含めれば、その数は100団体以上に上るという。
例えばデータセンター事業者である米ジェネシスホスティングの事例では、SDNの構築によってフレキシブルなグローバルIPアドレスのアサインが可能になり、従来の60%のグローバルIPアドレスの数でデータセンターの運用が可能になったという。データセンターのグローバルIPアドレスのキャパシティーが2倍近くアップしたことになる。日本通運の例では、SDNの構築によってネットワークを含めた仮想化のフレキシビリティーが増し、サービス導入までの時間、コストを大幅に抑えることができたと説明。企業ユーザーでもSDNのメリットが大きいことを示した。
同じく日本勢ではNTTコミュニケーションズ(NTTコム)も目立っていた。2日目のキーノートセッションに同社の伊藤幸夫理事サービス基盤部長が登壇したほか、会場内でも注目すべきデモを実施していた。日米間のデータセンターを、仮想ネットワーク上の一つの仮想データセンターのように扱えるデモだ。
同社が実施したデモではオープンソースのクラウド基盤「OpenStack」のネットワークコントロール機能である「Quantum」を使ったもの。ネットワーク仮想化機能を備えたクラウドサービスを構成した(図1)。
まずOpenStackによるクラウド基盤を日本国内のデータセンターに用意。ソフトウエアベースのOpenFlowスイッチ「Open vSwitch」(OVS)を日本と米国のデータセンター内に配備する。OpenStack Quantumを実装した専用のポータルから、OpenFlowコントローラーを通じてOVSを制御し、仮想マシン(VM)を日本から米国の物理サーバーへと移すライブマイグレーションを実施して見せた(写真1、写真2、写真3)。
操作はすべてポータルから、ほぼネットワーク環境を意識することなくできる。ポータル画面上で、ファイアウォールやロードバランサーの有無などクラウド上に作成するVMの構成を選び、ネットワークの接続形態(インターネット経由/VPN経由)、VM上のOSなども選択する。この際、自動的に最適なネットワーク帯域が用意される。
こうしてIPアドレスなどネットワーク環境を変えることなくライブマイグレーションできることを確認できた。
なお同社は2012年6月に、ネットワーク仮想化機能を備えたクラウドサービス「Bizホスティング Enterprise Cloud」を開始した(関連記事)。こちらはONS2012のデモでみせたようなオーバーレイ型ではなく、NECのOpenFlow対応スイッチ、OpenFlowコントローラーをベースにしたハードウエアを利用するタイプとなっている。