「政府情報システム刷新有識者会議」の第3回および第4回の会合が、それぞれ、2012年5月18日、6月25日に開催された。今回は、両会合のハイライトに筆者の意見を交えて紹介したい(同会議のこれまでの議事要旨、資料などはこちら)。

政治リーダーが有識者の声を受け止めた

 第3回会合で特筆すべきは、有識者からの度重なる「政府CIOの早期導入なくしてシステム刷新はあり得ない」という指摘に対して、岡田副総理が会合の締めくくりで「政府CIOについては、政府の中で詰めた上で、次回報告したい」とはっきりと受け止めたことだ。

 また、6月1日の衆議院社会保障・税特別委員会では、平井たくや議員(自民党)が「マイナンバーに関する情報システムの構築に当たっては、システムの開発途中で政府CIOがつくられるのではなく、政府CIOを中心としてつくる新しいシステム構築の第1号とすべき」と指摘。これに対し岡田副総理は、「内閣府に設置された情報戦略会議(政府情報システム刷新有議者会議のこと)でも早く政府CIOを設けるべきとの意見がある。私も同意見。そのための作業指示を出している。なるべく早くその形をとりたい。情報戦略会議でマイナンバーに関する情報システムだけでなく、独法(独立行政法人)まで範囲を広げ、全体のレガシーシステムの見直しを実施している。マイナンバー制度についても政府CIOあるいは情報戦略会議における議論を経てつくっていきたい」と答弁した。

 さらに第4回会合で古川国家戦略担当大臣は、「7月をめどとして政府CIOを設置し、政府情報システムの刷新体制を整備したい。権限等については、来年の通常国会へ法案を提出する。政府CIOは当面、(政府情報システム刷新のための)共通方針に沿って活動することとなる」と明言した。

 筆者は、2010年9月に始まった高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)電子行政に関するタスクフォースで、政府CIOの制度設計とオープンデータの推進に焦点を当てて発言してきた。ようやくこのテーマに取り組んできた有識者の声が政府中枢に届いて動き出したことに感慨が深い。

電子行政推進基本方針で示された政府CIOの制度設計

 政府CIOの制度設計は、電子行政タスクフォースが提言としてまとめ、IT戦略本部が2011年8月3日に決定した「電子行政推進に関する基本方針」のなかで、既に具体的内容が決められている。改めて、その概要を紹介したい。

 基本方針の中の「第5 新たな電子行政の推進体制(政府CIO制度)」が政府CIO制度設計の部分であり、政府CIO制度の(1)必要性、(2)役割、(3)体制整備と(4)導入プロセスを明記している。

 第1の「必要性」について、基本方針は、これまでの電子行政の取り組みが十分な成果を挙げてこなかったことを認め、政府の電子行政推進の司令塔として政府CIO制度導入が必要と位置づけている。該当部分は以下のとおりである。

1.政府CIO制度の必要性

 これまでの我が国の電子行政推進体制は、明確かつ迅速な決定と責任の下、取組を進めていく統率力・調整力・実行力が十分とは言えず、電子行政の取組が必ずしも十分な成果を挙げてこなかったひとつの要因となっていると考えられる。

 従来の反省の上に立ち、本基本方針に基づいて電子行政の取組を迅速かつ強力に推進していくため、政府の電子行政推進に係る実質的な権能を有する司令塔として、政府CIO制度を導入する。

 第2の「役割」について、基本方針は以下の項目を示している(項目ごとの詳細な内容は本文を参照)。

2.政府CIO制度の役割等

 電子行政推進に係る司令塔としての政府CIO制度の役割等は、その法的な位置付けも含めて、以下の方向で検討する。

(1)電子行政に関する戦略等
 1. 電子行政に関する戦略の策定等、
 2. 各府省の取組の評価等、
 3. 府省横断的に取り組むべき施策の推進

(2)政府の情報化推進施策等の管理
 1. 政府全体のIT投資の管理、
 2. 制度・業務プロセス改革の推進、
 3. 情報システムに関するルール等の整備等、
 4. 府省横断的なプロジェクトの推進、
 5. 技術情報等の収集、共有

(3)国・地方公共団体の連携
 1. 協議会における協議、
 2. 国の関与があるIT投資に係る連絡・調整

(4)国・民間の連携

(5)情報通信技術人材の確保・育成

(6)広報等

(7)諸外国との連携