COMPUTEX TAIPEIは、ドイツのハノーバーで毎年3月に開催される「CeBIT」に次ぐ世界第2のコンピュータ展示会とされる。パソコン産業の発展と共に展示会も拡大してきたことから、エイサーやアスーステック・コンピューターをはじめとする台湾のパソコンおよび周辺機器メーカーがこぞって出展している。今回も、この特集でここまで紹介してきたように米マイクロソフトや米インテルが推進するWindows 8やUltrabook関連の出展が際立っていた。

 その一方でCOMPUTEXは、常に新しい領域への拡大を図っている。数年前からスマートフォンやタブレットが存在感を増しており、周辺機器を含めて展示会場の多くを占めるようになった。そして今年注目を集めたキーワードは、「ARM採用サーバー」「自動車」である。

勢いを増すARM

写真1●英ARMが開催した報道機関向けイベント
写真1●英ARMが開催した報道機関向けイベント
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 ここ数年、パソコン産業の牙城と言えるCOMPUTEXに割って入ってきたのが、プロセッサーの命令セットやアーキテクチャを開発する英ARMだ。同社は、展示会の開幕に先立って報道機関向けイベントを開催(写真1)。同社のグラハム・バットCEOは「既にポストPC時代に入っている」と強調し、インテルのCPUをベースとするパソコンから、ARMアーキテクチャーをベースとするモバイル機器への移行が進んでいることをアピールした。

 端末の移行だけでなく、CPUの設計としても、インテル型の一体型から、アーキテクチャ設計と半導体製造の分業スタイルを採るARM型への移行が進むとする。一般向けのセミナーでも、「このシフトは、台湾の産業にとって絶好の機会だ」として台湾メーカーへの積極的な参加を呼び掛けた(写真2)。 

 そのARMが次に照準を当てるのが、サーバー領域である。米デルや米ヒューレット・パッカード(HP)、米テキサス・インスツルメンツ(TI)、米マーベル・テクノロジー・グループなどと共に、クラウド・コンピューティングでさらに拡大するサーバー市場を狙う。報道機関向けイベントでは「2015年に20%」という具体的なシェア目標を掲げた(写真3)。

写真2●半導体も分業型になるとして台湾メーカーの参入を促す
写真2●半導体も分業型になるとして台湾メーカーの参入を促す
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写真3●省電力を武器にサーバー分野への進出を図る
写真3●省電力を武器にサーバー分野への進出を図る
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 さらに今後のロードマップも提示する。現在は32ビット版のプラットフォームが登場しようかというタイミングだが、2013年から2014年には選択肢を広げていくとする。例えば2013年には現在のCortex-A9よりも50%以上パフォーマンスが高いCortex-A15を提供する。同時にハードウエアの仮想化と4Gバイト以上のメモリーにも対応する。米アプライドマイクロからは最初の64ビット版プラットフォームが登場する予定だという。2014年には、Cortex-A15の後継であるAtlasやApplloベースのプロセッサーを搭載したARMv8プラットフォームが登場する見込みであることも紹介した。

写真4●米カルキシーダによるARM搭載サーバーの試作機
写真4●米カルキシーダによるARM搭載サーバーの試作機
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 会場近くのホテルのスイートルームでは、ARMベースのサーバー向けSoC(システムオンチップ)「EnergyCore」を開発するカルキシーダが、Ubuntu 12.04を動作させる試作サーバーを展示解説していた(写真4)。2008年設立の同社にはARMも出資しており、サーバー分野のプラグシップ的な存在である。既にデルやHPなどが、同社のSoCをベースとしたサーバーを開発しているという。量産品は2012年後半にも発売予定とする。

 同社のSoCの消費電力は5Wほどで、サーバー設備の消費電力と設置床面積を10分の1にできると見込んでいる。TCO(資産保有の総コスト)については、最大50%以上を削減できるという。マーベルなど他社もARMアーキテクチャのSoCを開発しているが、EnergyCore製品については「ネットワーク機能や遠隔管理、電力管理などの機能も統合していることが特徴」(説明員)とする。