「中国国際ソフトウエア・情報サービス交易会」(CISIS)で行われた日中IT企業の「合作」をテーマにしたセミナーで「日中『合作』成功の方策を探る」と題したパネルディカッションが開かれた。このパネルディスカッションでは、大連ソフトウエア産業協会会長の李遠明氏と、日立インフォメーションシステムズ(上海)ソフトウエア事業部総経理の森保治氏、JBCCホールディングスの石黒和義会長の3氏が登壇。事業の現地化が必要という点で一致した。さらに営業職の地位の向上や、コスト意識の違い克服が課題といった指摘も出た。

企業の情報化が政府の課題

写真1●大連ソフトウエア産業協会会長の李遠明氏
写真1●大連ソフトウエア産業協会会長の李遠明氏
[画像のクリックで拡大表示]

 ディスカッションではまず大連ソフトウエア産業協会会長の李遠明氏(写真1)が、日本のソフトウエア製品は沿海部や東北地域で知名度が高いと評価。とはいえ「市場の裏には文化的要素や社会的な制度の差異があり、中国市場に適応できるビジネスやサービスのモデル構築が重要」と指摘し、日本企業による現地化や人材育成に期待を述べた。

 李氏によると、大連の中小企業の半分以上がホームページすら持たないほど中国企業の情報化はまだ初期的な段階で、中国政府や業界の発展にとって課題という。その上で日本企業が現地化を進めるために「中国のパートナーと提携して製品に一定の修正を加えて中国市場に出せば有利になる。現地の従業員の育成に力を入れれば可能性は高くなる」と語った。

 李氏は、96年に海輝軟件(ハイソフト)を設立して、2009年に米国で株式上場を果たした経歴の持ち主。2008年に大連百易軟件(プレソフト)社長に就任し、日本からのオフショア業務を受託や金融分野や政府開発のITコンサルティングを進めている。「日本の技術や経験を中国への紹介だけでなく日中間の連携業務が最後の仕事」と語る。

提案できる営業職の育成が大切

写真2●JBCN(上海)董事長の石黒和義氏
写真2●JBCN(上海)董事長の石黒和義氏
[画像のクリックで拡大表示]

 これを受けてJBCN(上海)董事長の石黒和義氏(写真2)は、現地化には賛成と述べ、将来的に中国市場での経営やマーケティング展開は中国人に任せたいと述べた。ただ、石黒氏はこれまでの実務の経験から、中国での市場開拓には課題もあると指摘した。

 その1つは、中国企業の意思決定は即決即断だが、それを実現する仕組みでは時間がかかる場合がある点だという。意思決定に上がるまで時間がかかるとされる日本企業と比べ、全体であまり変わらない印象があるとして、「そこをフォローする仕組みがもっと強くならなければという思いがある」と述べた。

 さらに中国では、マーケティングのエンジンを担う営業職に対する理解が低いと感じるという。技術職になれなかったり、口先や接待がうまい人材がなるものというイメージがあり、中国では顧客のニーズをつかんで役立つソリューションを提案できる営業職の育成が大切だと指摘した。

 石黒氏によると、中国企業向けに製品を提供しようとすると、日本でナンバーワンのレベルで評価される製品を持ち込まないと勝負にならない実感があるという。そこで同社では、日本の中堅企業向けビジネスインテリジェンス(BI)ツールとして販売シェアがトップクラスの高い同社の「WebReport」をクラウドコンピューティングでの展開も検討していると語った。