バンダイナムコゲームスは電通と協力して、「ゲームメソッドコンサルティング(チーム名:『SPECIAL FLAG』)」を2011年10月に開始した。 「ゲームメソッド」とは、ゲームなどのエンターテインメント・コンテンツの制作時に必要な知見やノウハウを、他業種の製品開発やサービスに応用する考え方 を指す。バンダイナムコゲームスが持つゲームをはじめとするエンターテインメント・コンテンツの開発ノウハウと、広告やマーケティングにおける電通のノウ ハウを用いて、家電や通信機器、インテリア、食品などの開発やサービスに関するコンサルティング業務を行う。バンダイナムコゲームス 社長室 新規事業部 ゼネラルマネージャーの一木 裕佳氏、同部 新規事業課 エグゼクティブプランナーの遠山 茂樹氏、同課 チーフの中野渡 昌平氏に話を聞いた。

 家電業界の商品開発に対するアプローチや考え方などは、ゲーム業界とは大きな違いがある。

 例えば、家電メーカーの場合、ある製品を開発する際は、さまざまな部署の意見を取りまとめ、それらをきちんとすべて盛り込む傾向が強い。特に多いのが、競合品と比較して足りない機能を入れるケースだ。そのため、最大公約数的な機器ができ上がることが多い。

 家電メーカーは、自らが開発したすべての技術をユーザーに見せたがる傾向もある。テレビのリモコンはその象徴だ。あらゆる機能を使えるようにした結果、ボタン数は増え、操作は分かりにくくなってしまった。家電のパンフレットも網羅的に機能を紹介しており、特徴が分かりにくい。

 一方、ゲームの場合はいろいろな要素を詰め込み過ぎると破綻してしまうため、盛り込む機能をあえて制限する。この制限の中で、さまざまな状況を表現する工夫が求められる。キャラクターを8×8のドット絵で作成しても、そのゲームの世界観を表現できるようにする。

 ゲーム制作は、家電のように短所を埋めるのではなく、長所を伸ばすことに重点を置く。コンセプトを固め、それを徹底的に貫く。多額の費用を投じて作成したゲーム・ステージも、つまらなければ平気でボツにする。“ちゃぶ台返し”は日常茶飯事だ。

 ゲームは、初見でその内容や使い方がユーザーに伝わらないと遊んでもらえない。アミューズメント施設にある、いわゆるアーケード・ゲームはその典型だ。ユーザーが一目見て遊びたいと思うものでなければ、お金を投じてくれない。こうした背景から、使い勝手や分かりやすさの面でゲームに一日の長があると考えている。

 日本企業は自前主義の傾向が強く、他業界と協業するケースは少ない。とはいえ、ゲーム業界には優れた知見が多いので、一緒に組めれば家電に新たな価値を提供できると考えている。(談)