写真1●NCTA主催による「The Cable Show 2012」の様子
写真1●NCTA主催による「The Cable Show 2012」の様子
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 米国は世界でも有数のケーブルテレビ大国であり、その業界団体であるNCTA(National Cable & Telecommunications Association)が開催する「The Cable Show」は、ケーブルテレビをめぐる動向を知る場として世界から注目されている。第61回目となる今年の大会は、2012年は5月21日から23日までボストンコンベンション&エキシビジョンセンターで開催された(写真1)。我々はこの大会に参加し、7兆円以上もの市場規模がある米国ケーブルテレビ業界の最新動向を探った。

米国における「SMART TV」の消失

 米国はいまもケーブル大国であるが、デジタル衛星放送、IPTVの台頭の影響もあり、その世帯数はジワリと減少を続けている。NCTAによると米国におけるケーブルテレビ加入世帯数は、2011年3月現在、約5960万件で世帯加入率は46.2%である。10年前の2001年は66.9%だったので随分と減少したことになる。

写真2●XFINITY TVサービスの解説を行うComcast Cable社CEOのNeil Smit氏
写真2●XFINITY TVサービスの解説を行うComcast Cable社CEOのNeil Smit氏
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写真3●米ComcastのSTB
写真3●米ComcastのSTB
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 なお、IHS社の「IHS Screen Digest U.S. Media Intelligence Service」によると、米AT&TのU-verseと、米VerizonのFiOSという二つのIPTVサービスの加入件数は2011年末で800万に迫ってきており、増加を続けている。昨年シカゴで開催された「THE CABLE SHOW 2011」では、IPTV機能を内蔵し、放送・通信融合サービス用デジタルテレビである「SMART TV」の開発・実用化の動きが盛んであったが、わずか1年もたたないうちにその姿が消えうせた感がある。これは、「Google TV」などに代表されるような通信サービス機能を優先したテレビへ買い換えるというエンドユーザーが少なかったためという。

 概して「SMART TV」機能を内蔵のデジタルテレビ端末は、放送番組の表示機能した持たないベーシックな格安タイブよりも価格は高い。何よりも、米国ではアナログ・ケーブルテレビ経由のテレビ視聴環境が1億台程度残っているという。

 アナログのホームターミナルがデジタルSTBまたはケーブルインターネットで提供されるIPTVサービス用STB(今年の展示ではComcastのXFINITY TVというサービスが代表例、写真2、3)に置き換わっている途中であるが、米国でも地上放送のデジタル化により、ケーブルテレビ契約をやめ直接受信に移行した世帯も存在する。また全米各州の主要地上局が同時再送信されている衛星放送パッケージに乗り換える層も少なくない。

 また、ブロードバンドサービス上で展開されるOver The Topの代表格NetflixやHuluに加えて、Amazon Instant Video、さらには新たに地上放送のインターネット再送信サービスをニューヨーク州で開始したAereoなどが広がりを見せている。新顔の登場から益々利便性の向上が期待され、その動向に注目が集まっている。