「ソフトフォン」の技術基準の認証のあり方について検討している情通審のIPネットワーク設備委員会 技術検討作業班で、2012年4月27日開催の第23回会合までに様々な認証方法が提案された。作業班は6月下旬までに意見を集約し、答申案を作成、7月上旬から意見募集を実施するスケジュールで検討を進めている。

 検討対象となるソフトフォンは、通信事業者の音声通話サービスに接続可能なものである。例えば、パソコンとヘッドセットを使って発信できるソフトフォンの他、スマートフォン用のアプリでも、0AB~J IP電話のSIPクライアントとして登録し、宅内の無線LAN経由で固定電話の子機のように使えるものなどが対象になる。なお、一部のソーシャルアプリで、登録ユーザー間で通話できるサービスがあるが、これらは「単純にアドレス帳を利用しているだけで、通信端末としては音声サービスではなくデータ通信対応端末ということになり今回の対象ではない」(総務省)という。

 SIP対応のソフトフォンは、ハードウエアとして販売されているIP電話機と違って、様々な性能の端末にダウンロードして使われることが想定される。したがって、一定の通話基準を満たす利用環境が確保できるかどうか、またそのソフトフォンが、信号の連続送出など、通話網にダメージを与えるような不安定な動作をしないかどうかを確認することが難しい。なぜなら、ソフトフォンと事業者のSIPサーバー間の通信は、「単純にセッション制御に関わるプロトコルがやりとりされるだけで、そのクライアントがどのようなソフトフォンなのかまでを把握できず、自動的に排除するといった対策はとれない」(NTT東日本)からだ。このため、あらかじめ一定の技術基準に適合していることを検査、認定し、それを担保するソフトフォンの認証制度が必要となっているわけだ。

 作業班で提案されている認証方法は、例えば(1)ソフトウエアが改ざんされていないかどうか、常にメーカー側のサーバーとの通信でライセンス確認を取り、一定の性能を満たす端末以外の環境にはインストールできないようにする、といったハードルを高めた厳密なものから、(2)メーカー自身の検査で、一定の条件で使う範囲においては適合である、と宣言する方式、(3)通話サービスを提供する通信事業者が、自身の基準で検査して適合ソフトをユーザーに公示する方式、などがでている。一方、ソフトフォンのメーカー側からは、「海外からフリーで配布されるようなソフトがある中、国産ソフトだけ検査の手間やコストがかかるようでは競争上不利になるのではないか」、といった懸念が表明されている。

 そもそもハードウエアとして流通する電話機や携帯電話機でも、適合認証を受けていない端末をネットワークに接続して使ってしまうことは不可能ではない。ただソフトフォンの場合、ハードウエアに比べて海外製品も国産製品と同様に流通ができてしまう。「海外製も含めすべての製品を認証するのが当然なのでできるだけハードルの低い認証が必要」(総務省)であり、さじ加減が難しい問題となっている。