米アップルは2012年秋から、iPhone/iPad向けOSの新版「iOS6」を提供する。地図情報や音声アシスタントといったクラウドサービスとの垂直統合を強め、米グーグルとの差異化を図る()。6 月11日(米国時間)に発表した。

表●米アップルが2012年秋にリリースするiOS 6の概要
クラウドサービスやソーシャルメディアとの連携機能を多数取り込んだ
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 前版iOS 5のリリースからわずか8カ月で登場したiOS 6の最大の目玉は、新たな地図情報サービスだ。これまでグーグルの「GoogleMaps」に頼っていたが、自社製のサービスに切り替える。

 新版はGoogle Mapsと同様、周辺店舗や経路の検索機能を備える。加えて、端末の移動速度をクラウド上に集めて算出した結果を利用し、リアルタイムで渋滞情報を表示できるようにする。

 本格的なカーナビゲーション機能も実装。トヨタ自動車など日米欧の自動車メーカー9社と協業し、音声による操作でiPhoneやiPadなどをカーナビとして使えるようにしていく。

 企業が気になるのは日本版サービスの展開とGoogle Maps APIのサポートだ。アップルは開発者向けにiOS 6のベータ版を公開済み。ベータ版を試用したあるアプリ開発者によれば、現時点でも日本版の地図データを表示可能だという。少なくとも基本的な地図表示機能は、日本向けにも提供する可能性が高い。

 ネイティブアプリやブラウザーからGoogle Mapsの機能を利用可能にするGoogle Maps APIについては、アップルは今後のサポート方針を明らかにしていない。同APIを使うアプリの提供企業は動向を注視する必要がある。

 自然言語をクラウド上で認識・処理する音声アシスタント機能「Siri」も強化する。情報の参照元となる外部のWebサービスを拡大し、スポーツの結果や映画、レストランなどの検索精度を高める。現在はiPhone 4Sでしか使えないが、iOS 6から第3世代iPad(iPadの最新版)でも利用可能にする。対応言語も増やすという。

 地図情報と音声アシスタントはどちらも、グーグルが強みを持つ情報検索分野のサービス。ビッグデータの基となる、ユーザーの行動や入力といった情報を集約する窓口の役割を果たす。アップルは、これらのサービスをOSと一体として提供することでユーザーの使い勝手を高めると同時に、スマートフォン用OSの市場シェアで首位に立つグーグルに対抗する。

 グーグルも手をこまぬいているわけではない。6月からモバイル用Google Mapsにオフライン機能を追加するなどの強化策を打っていく。6月27~29日(米国時間)に開催予定の開発者向けイベント「Google I/O」ではAndroid OSの新版「5.0」を発表する見通しである。