米マイクロソフト(MS)がクラウドサービス「Windows Azure」で、「Linux」に対応した()。2012年6月から、ユーザーが仮想マシン上で利用できるOSとして、「Windows Server」に加えて、「CentOS」「SUSE Linux Enterprise Server」「Ubuntu Server」などのLinuxディストリビューションを選択できるようにした。

表●米オラクルと米マイクロソフトが6月に発表したクラウドに関する主な新施策
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 MSにとっては大きな方針転換だ。従来のWindows Azureは、Windows用アプリケーションの実行環境を提供するPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)だった。これまで仮想マシン上で利用できるのは、MSがインストールしたWindows Serverとミドルウエアだけで、ユーザーはOSを選択できなかった。またユーザーが利用できるミドルウエアの種類も限定されていた。

 今回からWindows Azureは、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)としても利用可能になった。ユーザーはOSとしてLinuxを選択できるほか、ミドルウエアやアプリケーションを自由にインストールできる。実質的には、「Amazon Web Services(AWS)」の後追いである。仮想マシンの利用料金は、Windows利用時が1時間当たり10.06円(仮想マシンサイズがSの場合)、Linux利用時が7.43円(同)とLinuxのほうが安い。

 一時はクラウドに否定的だった米オラクルも、6月に大きく方針転換した。パブリッククラウドである「Oracle Cloud」を発表したのだ。業務アプリケーション製品群「Fusion Applications」のSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)や、「Oracle Database」や「WebLogic」が利用できるPaaSを公開し、プレビュー版の提供を開始した。

 オラクルが意識するのは、米セールスフォース・ドットコム(SFDC)だ。オラクルのラリー・エリソンCEO(最高経営責任者)は6月のイベントで、「Oracle Cloudは、業界標準を採用したプラットフォームだ」と語り、専用のアプリケーション実行環境を提供するSFDCのPaaSとの違いを強調した。またSaaSでも、CRM(顧客関係管理)と企業内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)という、SFDCが得意な分野にまず参入した。

 MSはAWS、オラクルはSFDCをターゲットに見据え、世界1位、2位のソフトメーカーによる、クラウド専業ベンダーへの猛追が始まった。