海苔の山本海苔店やカステラの文明堂など、中小企業ながら確固たる存在感を持つ老舗。こうした老舗には、マーケティング理論の製品ライフサイクルの概念もほとんど当てはまらない。こうした7社の老舗の強みを、マーケティング理論に基づいて解き明かすのが本書だ。

 例えば山本海苔店の施策は、1人の顧客が取引開始から終了までにどれだけの損益をもたらすかに注目する「顧客生涯価値」の向上に効果を発揮している。具体的にはサンリオとの共同企画による加工品などで商品群を拡大。主力商品の高級海苔の愛好客に、もう1品を購入してもらう工夫を凝らしている。学者である著者が各社の社長らに敢行したインタビューも興味深い。

老舗

老舗
鶴岡 公幸著
産業能率大学出版部発行
1680円(税込)