Fedora(フェドラ)は、非営利のコミュニティである「Fedoraプロジェクト」(写真1)がオープンソースで開発を進めているLinuxディストリビューションである。企業向けLinux分野で大きなシェアを持つ米レッドハットが同コミュニティを強力に支援しており、同社の有償Linuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)へ開発成果を取り込むための“実験場”としての役割も担っている。

写真1 Fedoraプロジェクトの公式Webサイト(日本語ページ)
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 LinuxディストリビューションとしてのFedoraの特徴の一つに、「新しい技術や仕組みを積極的に取り入れる」という姿勢がある。このため、「先進技術をいち早く自分の手で試せるLinuxディストリビューション」として、技術的好奇心おう盛なユーザーを中心に非常に高い人気を誇っている。新バージョンが出るたびに「今回はどう変わったかな」とワクワクしながらインストールできるところなど、まさに本連載にうってつけのOSといえるだろう。

 開発ペースがかなり速いことも同ディストリビューションの特徴である。2003年11月に最初の「Fedora Core 1」が公開されて以来、約半年に1回のペースで新バージョンが公開されており、2012年6月14日現在の最新バージョンは5月29日(米国時間)にリリースされた「Fedora 17」である(写真2)。メジャーリリースの合間には、開発途中バージョンのリリースが複数回あるので、1年を通して常に何らかの動きがあるという印象だ。

写真2 2012年5月29日にリリースされた最新バージョン「Fedora 17」のデスクトップ画面
参考までに、次期バージョンの「Fedora 18」は2012年11月6日にリリース予定となっている(6月14日現在)
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長期安定で使うサーバー用途にはあまり向いていない

 最近はかなり風向きが変わりつつあるものの、Linux OSの主な利用目的は何かと問われたら、「サーバーOSとしての利用」を挙げる人が多いだろう。しかし、FedoraはサーバーOSとして使うのにはあまり向いていない。積極的に新技術を採用する姿勢が継続性や安定性を重要視するサーバー用途と相反するうえ、サポート期間も約1年1カ月(二つ先の新版がリリースされた翌月まで)と非常に短いからだ。サーバー目的で使うなら、連載第1回で紹介したRHEL互換OS「CentOS」(写真3)などの方が向いている。

写真3 Linuxでサーバーを立てるならFedoraよりもCentOSなどの方が向いている
ただし、Fedoraがサーバー用途として本質的に使えないなどということでは決してない。実際にFedoraでサーバーを運用している人はたくさんいるし、サーバー向け新技術をいち早く試すために実験用サーバーを立てるケースも多い。あくまで比較論として、長期に渡って運用するサーバーを立てたい場合は他にもっと適したLinuxディストリビューションがあるという話である
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 そんなわけで、今回はこのFedora 17をサーバーOSではなくデスクトップOSとしてクライアントパソコンにインストールして使ってみよう。ひと昔前のFedoraは、普段Windowsを使っているユーザーが同じ感覚でデスクトップOSとして使うには正直厳しかったが(少なくとも筆者はそう感じていた)、今ではかなり改善されている。Webブラウザーを使ったり、日本語を入力したりといった基本的な部分でつまづくようなことはほとんどない。

 現在世の中にあるクライアントパソコンの多くでは、主流のクライアントOSである「Windows 7」が稼働していることだろう。そこで今回は、Windows 7がインストール済みのパソコンにFedora 17を追加インストールし、両方のOSを切り替えて起動できるようにする「デュアルブート化」のための手順を解説する。

 一つ前のバージョンであるWindows Vistaも同様な手順でデュアルブート化できるが、さらに古いWindows XPについては手順が大きく異なるので適用できない。XPとLinuxのデュアルブートについては、要望があれば機会を改めて解説する予定である。

 なお、Windowsが稼働するパソコンへLinuxを追加インストールしてデュアルブート化に必要な設定を施す作業は、ハードディスクのパーティション操作などかなり危険な作業を伴う。記事と同じシステム構成で記事の記述通りに作業をすれば問題なくインストールできるようにしているが、操作を誤ると最悪Windowsが起動しなくなったり、ハードディスク内のデータが丸ごと消失したりするといったトラブルに巻き込まれる危険がある。

 こうした操作に慣れていない人はもちろん、慣れている人でも事前にハードディスクの完全バックアップを取っておくなど万全の体制を敷いてからインストール作業に臨んでほしい。万一、操作を誤ってパソコンが起動しなくなったり、大切なデータが消えてしまったりしても、日経BP社およびITpro、筆者は一切責任を負わない。くれぐれも「完全自己責任」の下で作業していただきたい。

 「デュアルブート化するのは怖いけれどFedora 17はぜひインストールして触ってみたい」という人は、Fedora 17専用にパソコンやハードディスクを別途用意し、シングルブート環境でインストールすることをお勧めする。専用ハードディスクを用意する場合、Windows 7が入ったハードディスクを一時的に外して置き換える形にすれば(つまり別のパソコンを用意するのと実質同じ)、ハードディスクを追加する場合よりも設定の手間(起動優先順位の変更など)が省けるうえ、既存のWindows環境を壊す危険性を大幅に減らせる。

 ただし、OSを使い分けるためにハードディスクを付け替えるのは実際問題としてかなり面倒である。若干の使い勝手やパフォーマンスの低下、画面表示の劣化の可能性(OSによって起こる可能性がある。Fedora 17では問題ない)などを我慢できるなら、連載第3回で紹介した「VMware Player」や第4回で紹介した「Oracle VM VirtualBox」などパソコン向けの仮想化ソフトを使って仮想マシンにインストールするのが筆者的に最もオススメの方法である。実際に、本記事でも画面をキャプチャするために仮想マシンを活用している。