東京都墨田区にある老舗の国産Tシャツメーカーである久米繊維工業。同社の久米信行代表取締役社長はインターネット界の有名人だ(写真)。システム技術者から家業である繊維メーカーの3代目に転じ、Tシャツのネット直販で業績を伸ばしてきた。ウェブサイト「T-galaxy.com」でTシャツにプリントしたい写真をアップロードすれば、オリジナルのTシャツを作れる。この仕組みが早くから評判を呼んできた。

こうした通販サイトは今でこそ珍しくはなくなり、ユニクロなどの大手衣料品チェーンも店舗やネットを問わず、Tシャツの販売に力を入れている。激しい競争のなかで、年商がわずか5億円の中小企業である久米繊維工業がしぶとく生き残ってこられた理由の1つは、久米社長が率先してツイッター(ミニブログ)やブログ、ユー・チューブ、フェイスブックなどの「ソーシャルメディア」を活用してきたからだ。
どんなにいい商品を持っていても、その存在や良さを伝えられなければ買ってはもらえない。久米社長は幅広い観察眼を生かし、早くからソーシャルメディアで情報を発信。ネット上の口コミ伝いにファンの心をつかんできた。
久米社長はツイッターにつぶやきや写真を頻繁に投稿しており、5600人のフォロワー(読者)がいる。ユー・チューブにTシャツ関連のイベント報告などの動画をアップすることもある。久米繊維工業の社員にもツイッターやブログで積極的に情報発信することを勧めている。
今ではツイッターやブログを口コミの発信源や販促ツールとして使おうと考える企業は幾らでもある。久米社長もその1人だが、「経営者だからといって、仕事の話ばかりつぶやいているツイッターは面白くないはず。すぐに飽きられてしまう」。ネット利用者も最初は物珍しさからフォローするかもしれないが、そのうちに売り手目線の情報にうんざりして読まなくなってしまう。
そこで久米社長は公私を問わず、面白いと思った話をどんどんつぶやく。それには日常の観察が欠かせないが、久米社長の極意は「とにかく視野が狭く固定的になるのを避けること」に尽きる。それには3つのコツがあると明かす。