クラウドでコラボレーションする相手は、人間だけとは限らない。自動車、エアコン、発電設備──。街中の膨大な機器が、クラウドをはじめとする情報システムとコラボする。これにより社会インフラの正確な状態を把握したり、顧客との新たな接点を作り出すなどビジネスの改善につなげたりすることが可能になる(図1)。

図1●クラウドと機器とのコラボレーションによる効果。消費者、機器、企業のそれぞれが、機器とクラウドのコラボによるサービスを利用できる。
図1●クラウドと機器とのコラボレーションによる効果
消費者、機器、企業のそれぞれが、機器とクラウドのコラボによるサービスを利用できる
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トヨタの自動車クラウドが始動

 年間の新車販売台数七百数十万台。愛知県の人口に匹敵する数の顧客接点を作り出し、ビジネスモデルの改良や顧客サービス改善に生かす。これがトヨタ自動車のクラウドコラボ戦略だ。「顧客にクルマの新しい楽しみ方を提供する。自動車を頼りがいのある友人のような存在にしたい」(友山茂樹 常務役員 事業開発本部本部長 IT本部本部長)。

 同社は2012年1月に発売したプラグインハイブリッド自動車の「プリウスPHV」で、自動車とクラウドサービスのコラボを前面に打ち出す。この「自動車クラウド」を土台に、自動車と顧客、販売店、そしてトヨタ自身をつないだ事業拡大を図る(図2)。

図2●トヨタ自動車が開発する「自動車クラウド」の全体像。クラウドと自動車をつないで、顧客サービスの改善やビジネスモデルの改革に生かす。新たにヤマハ発動機の電動二輪車も、このクラウドサービスを利用できるようにした。
図2●トヨタ自動車が開発する「自動車クラウド」の全体像
クラウドと自動車をつないで、顧客サービスの改善やビジネスモデルの改革に生かす。新たにヤマハ発動機の電動二輪車も、このクラウドサービスを利用できるようにした。
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 まず自動車クラウドで提供するのは、プリウスPHVの顧客向けテレマティクスサービスだ。顧客は自動車の電池残量や走行可能距離、バッテリーを長持ちさせる販売店の助言などを、スマートフォンで参照できる。自動車のプローブ(走行状態)情報や、バッテリーの使用傾向などの情報を、収集・蓄積することもできる。

 友山常務は、これらのサービスを開発・運用するために、「クラウドを使うのは必然だった」と話す。「世界規模でクラウドを展開するマイクロソフトやセールスフォースのデータセンターや技術力は大きな魅力。開発や運用のコスト、開発に費やす時間、いずれを考えても、クラウドを利用しなければ実現は難しい」(同)。