場所も規模も業種も問わず、手を組む相手をどんどん増やす。そんな「全員集合」の巨大コラボレーションを、クラウドは可能にする。一つの事業の上流から下流までに関わる全企業が手を組んだり、特定の業界に所属する全ての企業が参加したりすることが、クラウドを使うことで現実となる。

前例ない規模拡大へ挑む

 特定の業界の企業によるコラボの狙いは、これまでにない規模や分野のビジネスへ、共同で当たることだ。クラウドを使うことで、1社では解決できない課題を解決したり、これまでは手を組めなかった企業まで巻き込んで協業したりといったことを可能にする。

 旧ソ連のアゼルバイジャン共和国、首都バクーの近郊で、2013年12月の完成を目指して火力発電所の建設が進んでいる。手掛けるのは日本のプラント建設大手、東洋エンジニアリングだ。

 このプロジェクトを、クラウドが支えている。東洋エンジニアリングは、「SHOKA」と呼ぶプロジェクト管理システムをクラウド上で構築し、プロジェクトに参加する全企業で利用している(図1)。

図1●東洋エンジニアリングのプラント建設プロジェクト管理システム「SHOKA」の特徴。様々な企業がプロジェクト期間中だけ集まって情報共有できるシステムを構築するため、クラウドを利用した。
図1●東洋エンジニアリングのプラント建設プロジェクト管理システム「SHOKA」の特徴
様々な企業がプロジェクト期間中だけ集まって情報共有できるシステムを構築するため、クラウドを利用した。
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 SHOKAの主な用途は、図面や設計書といった様々な文書ファイルを管理したり、参加企業間で共有したりすることだ。参照や登録する文書を参加企業ごとに管理するため、認証やアクセス制御の機能も備える。

 東洋エンジニアリングがSHOKAを運用し始めたのは、2011年2月。既に9件のプロジェクトで、SHOKAを利用している。

 SHOKAで実践しているプロジェクト管理は、東洋エンジニアリングにとって未体験の規模のものだ。同社が手掛けるプロジェクトは世界的なエネルギー需要の高まりを受けて、2002年ごろを境に大規模化していった。同社の日本本社の従業員は1500人。それまでのプロジェクトの参加人数は多くとも本社の社員と同数以下だったが、「2000~3000人規模のプロジェクトを、複数企業と共同で手掛けることも珍しくなくなった」(林斗志夫IT統括本部長代行プロジェクトITグループグループマネージャー)。参加企業数は200~500社にも上る。