PM(プロジェクトマネジャー)が課題管理表や障害管理表、進捗管理表などのファイルをメールに添付してプロジェクト関係者に送り、情報を共有しているプロジェクトは少なくない。それも1回のプロジェクトで、数えきれないほどの回数、添付ファイルがやり取りされていることだろう。

 メールにファイルを添付する狙いの一つには、メールの受け取り手の仕事に役立ててもらうことがある。その狙いのためには、送り手であるPMが受け取り手に配慮し、Excelなどで作成したファイルを使いやすくレイアウト調整をしてから送ることが大切だ。

 ところが、メールで添付ファイルを日常的にやり取りすると、この狙いに思いが至らず、Excelなどで作成したファイルをレイアウト調整せずに添付してメールで送ってしまいがちだ。しかしこうした配慮不足のメールを送ってはいけない。受け取り手に不便をかけてしまうからだ。

未調整なファイルを添付し続けたPM、Mさんのケース

 SIベンダー所属のMさんがPMを務めるプロジェクトでは、情報共有の目的で、メールを使ってExcelで作成した課題管理表のファイルを送っていた。

 送り先であるプロジェクト関係者には、Mさんと同じSIベンダーのメンバーに加えて、ユーザー企業の窓口担当者Kさん、協力会社の窓口担当者Sさんが含まれる。Mさんが次々と発生する課題や課題の対応状況を表に追加して、毎週月曜日、プロジェクト関係者にファイルをメールで送信していた。

 ところが情報共有を始めてしばらくたったとき、プロジェクト関係者が集まるミーティングで、ユーザー企業の担当者であるKさんからMさんに対してクレームが上がった。

 Kさんは、Mさんからメールで受け取った課題管理表を印刷して、ユーザー企業側のメンバーに配布していた。そのとき、印刷すると課題管理表の幅が紙に収まらず、はみ出してしまっているのだという。Kさんは「毎回レイアウト調整してから印刷する手間がかかっている。いいかげん、Mさんがレイアウトを調整してから送ってほしい」と苦言を呈した。

 それを聞いていた協力会社の窓口担当者、Sさんからも「字も小さくて見づらいし、課題管理表のそれぞれの列の間隔も未調整で読みにくい」という指摘が出てきた。Sさんも毎週メールを受け取ると、文字のフォントを大きくしたり、表の列を整えたりしてから、協力会社内のメンバーに送っていた。Mさんが同じSIベンダー所属のメンバーにも確かめたところ、メンバーもそれぞれにレイアウト調整してから表を使っていたことが分かった。

 おおもとのメールの発信元であるMさんがレイアウト調整せずにファイルを添付して送信し続けたことで、ファイルの受け取り手が各自、毎回レイアウトを調整することを繰り返さなければならなかった。

 受け取り手はみな、情報共有の当初から「レイアウト調整に手間がかかって仕方がない」と、Mさんに対してフラストレーションをためていた。それがこのミーティングで噴き出したのだ。

 「プロジェクトの遅延といった目立った問題にはなっていないので気付かなかった。ムダな作業を周りの人たちに強いて、我慢させていたのか。不満を募らせるのも無理はない。受け取り手に対する気配りが足りなかった」と、Mさんは反省した。以降、Mさんはレイアウト調整をして送るように改め、プロジェクト関係者それぞれがレイアウトを調整しなくても済むようにした。