DTLA(Digital Transmission Licensing Administrator)は、今年1月にDTCP-IPの最新仕様となるDTCP+をリリースした。このDTCP+の最大の特徴はダビング10に対応した新しいコピーカウントの採用と家庭内LANの外からアクセスすることが可能なリモート・アクセス機能が追加されたことである。今回は、この新しいDTCP+の概要を紹介する。

 東芝、日立製作所、米Intel、パナソニック、ソニーの5社が設立したDTLAは、デジタル家電で利用するIEEE1394やUSB、家庭内LANなどのIPネットワークを介して伝送されるコンテンツの伝送に関する著作権保護技術規格「DTCP(Digital Transmission Content Protection)」(対象はIEEE1394など)、「DTCP-IP( DTCP over IP)」(対象は家庭内LANなどのIP網)をライセンスしている団体である。

 家庭内LANを経由してデジタル家電やパソコン、モバイル端末を相互接続するガイドラインにDLNA(Digital Living Network Alliance)があるが、この中でDTCP-IPは機器間のデジタルコンテンツ伝送時の著作権保護技術として使われている。また、デジタル放送受信機規格であるARIB(電波産業会)規格に採用されており、DTCP-IPではHDD(ハードディスク装置)レコーダーに録画したデジタル放送コンテンツを家庭内LANを介して、別な部屋のテレビで視聴することが可能となっている。今回取り上げるDTCP+は、DTCP-IPの最新仕様としてRevision 1.4で追加されたものである。

 今回リリースされたDTCP+には、新たに次の4つの機能を追加した。
(1)デジタル出力制御(Digital Only Token)
(2)メディアに依存しないCMI(Content Management Information、コンテンツ管理情報)の伝送方式
(3)新しいコピーカウントCMI
(4)リモート・アクセス機能

デジタル出力制御(Digital Only Token)

 DTCP-IPでは、DTLAが発行した証明書と公開鍵・秘密鍵を機器が持っており、AKE(Authentication and Key Exchange)と呼ばれるデバイス証明と鍵交換プロトコルを用いて機器認証と伝送路の暗号化を行う。具体的には、コンテンツ提供元であるソース機器(ex DLNAサーバ)とコンテンツを受信するシンク機器(ex DLNAクライアント)間において、このAKEプロトコルを使い、正規ライセンスを持った機器であるかどうかの機器間認証を行い、伝送するコンテンツの暗号鍵を共有して、その鍵を使った伝送路の暗号化行ことで、不正機器によるアクセスを排除する。

表1●E-EMI(Encryption Mode Indicator)
表1●E-EMI(Encryption Mode Indicator)
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 コピー制御情報やコンテンツをコンテンツの種類に依存せずに暗号化して伝送するため、DTCP-IPではPCP(Protected Content Packet)パケットを利用する。このPCPパケットは、ヘッダ部分に暗号化方式を示すC_A2とC_A、暗号化モードを示すE-ECM(Extended Encryption Mode Indicator)、コンテンツ鍵の更新に利用するNc、コンテンツの長さを示すCLから成る。なお、E-ECMは表1に示す通り、コピー制御情報(CCI、Copy Control Information)が含まれている。また、ヘッダ部は暗号化されていないが、データ部はAESで暗号化されている。

 64ビットのNcフィールドに16ビットのPCP-URフィールドがあり、この中にデジタル出力制御フラグのDOT(Digital Only Token)フィールドがある。このDOTフィールドが「1」の場合は、プロテクトされたデジタル出力経由でのみ映像を出力することができる。