NECとTOKAIコミュニケーションズは、NECのタブレット端末「LifeTouch B」を使ったケーブルテレビ加入者向けサービスに関する実証実験を、2012年4月から約3カ月間実施する。LifeTouchシリーズは過去にもケーブルテレビ品川や東京ケーブルネットワークが実施した加入者向けサービスの実証実験でも採用されている。NECには現在、数十社のケーブルテレビ事業者からLifeTouchシリーズに関して問い合わせがあり、このうち実証実験を実施、または実施する方向で具体的に検討している事業者も「約10社に上る」(NEC クラウドデバイス事業部長 岡田靖彦氏)という。

企画段階でケーブル用途を想定したタブレット

 ケーブルテレビ事業者が実証実験に採用しているモデルは、LifeTouchシリーズの中でも「パソコンに日常的に触れておらず、キーボード操作に慣れていないシニア層をターゲットに企画・開発したモデル」である。NECのこのシリーズは、米Appleの初代iPadが発売される前で、まだタブレット端末の使われ方がはっきりしていない段階から商品化に取り組んできたものである。NECでは製品企画の立ち上げ当初から、ケーブルテレビ事業者向けの用途を想定して開発を進めてきたという。

 こうした想定ユーザーを対象とした様々な用途に対応するため、ハードウエア面では大きなボタンや持ちやすい形状、ぶつけても痛くなりにくいように角を丸めた形状、滑りにくくするためにスリットを配置するといった工夫を盛り込み、ユニバーサルデザインを重視しながら開発を進めてきた。またタッチパネルには、スマートフォンやタブレット端末で一般的な静電式に加えて、抵抗膜方式のパネルを搭載したモデルも追加した。抵抗膜方式のタッチパネルは、カラオケのリモコン端末やATMの操作画面で広く使われており「静電式よりもタッチ感がある」(NEC クラウドデバイス事業部 シニアエキスパート 宮原文之氏)という。シニア層が使い慣れた操作性をタブレットでも実現することで、より使い勝手を高められると考えたためである。

 ケーブルテレビ向けのインテリジェントリモコンとして利用するため、リモコン機能も実装した。無線LAN経由で操作できるAV機器も登場しているが、まだ一部に限られる。ケーブルテレビ事業者のセットトップボックス(STB)を操作するには、現在主流である赤外線を使ったリモコン操作を実現する必要がある。そこでLifeTouchシリーズには、タブレット端末としては珍しい赤外線ユニットを搭載したモデルをラインアップし、リモコン用のアプリも提供した。

 このほか、SDHCカードスロットは、スマートフォンやタブレット端末で一般的な小型カード専用のスロットではなく、昔から使っているフルサイズのカードを利用できるようにした。