様々な情報を見える化・数値化すると、予定と実績の対比が可能になり、客観的な状況の把握が容易になる。だが、進捗の予実を見て予定を下回っていたときに、頭ごなしに「ダメじゃないか!」と怒っていないだろうか。それでは、見える化の本来の目的を達成するのは難しい。

小林 慶志郎
マネジメントソリューションズ 中小企業診断士


 あなたのプロジェクトで、こんな会話を耳にしたことはないでしょうか。

プロジェクトマネジャ(PM):「Aチームの進捗状況はどうなっていますか?」

チームリーダー:「予定では15タスク終わっているべきところですが、進捗が思わしくなく、現在13タスクしか終わっていません」

PM:「あれ、遅れているんですか? 先週聞いたときは、今週までに終わると言っていたじゃないですか」

チームリーダー:「はい…、先週時点ではそうだったのですが…」(PMからの無言のプレッシャーに負けて)「でも、今週末までに必ずリカバリーします(出来るか分かりませんけどね)」

PM:「わかりました。それじゃあ来週また報告してください」

 この会話は極端な例に見えるかもしれません。ですが意外に身近なところでこんなやり取りがされているのではないでしょうか。

 この会話の後、チームリーダーは期日に間に合わせるために頑張るでしょう。そして優秀なリーダーであれば、期日を守り、事なきを得るかもしれません。ですが、状況によっては「頑張ること」が解決策にならない場合もあります。もし終わらなかった場合にどう対応するのか、この会話の中では議論の余地がありません。

 少なくとも、こんなやり取りを繰り返せば、チームリーダーはPMに対して、悪い話は報告しなくなってしまうでしょう。

PMの話し方次第で、がらっと結論が変わる

 一方、同じ話でも、こんなやり取りをすると違った結果が出てきます。

PM:「Aチームの進捗状況はどうなっていますか?」

チームリーダー:「予定では15タスク終わっているべきところですが、進捗が思わしくなく、現在13タスクしか終わっていません」

PM:「そうですか。遅延の原因は明確になっていますか?」

チームリーダー:「はい、XX機能の開発が予想以上に難しくて、時間がかかっていまして…」

PM:「チーム内で対応の見込みは立っていますか? 他チームの協力は必要ないですか?」

チームリーダー:「XX機能の問題はチーム内で有識者を集めて今週末には対応できますが、後続のYY機能の開発に影響が出てしまうかもしれません」

PM:「わかりました。遅延の可能性があることを、早めに関係チームに伝えておきましょう」

 PMの話し方次第で、チームリーダーもPMに状況を報告しやすくなるのではないでしょうか。