2012年4月2日。セブン銀行として初めて、本格的な海外BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を開始した。中国・大連の「大連信華信息技術(大連信華)」に対して、口座開設業務に関わるデータ入力作業を委託したのだ(写真1)。

写真1●セブン銀行は2012年4月2日、大連信華にデータ入力業務の委託を始めた
写真1●セブン銀行は2012年4月2日、大連信華にデータ入力業務の委託を始めた

 大連信華でのデータ入力件数は、1日当たり500件を目標としていたが委託初日に約900件を達成。1カ月を経た5月上旬時点でも同水準を保っている。しかも、データの入力ミスは以前と比べて半分になり、人的コストは半減した。「業務スピードは、以前と比べ遜色ない。作業の精度はむしろ向上している」と業務改革部の簗場康行次長は話す。

事務作業の効率化に手が回らず

 セブン銀が実施したBPOは、同行が2010年から進めている事務作業改革の中核を成す。同行は「ATMに特化した銀行」であり、経常収益883億円のうちATM受け入れ手数料が838億円を占める(12年3月期)。

 このため、2001年の設立以来、セブン銀は主にATMの増設や提携先の拡大に注力してきた。2012年3月末時点で、セブンイレブンを中心としたATMの設置台数は1万6000台以上、提携先金融機関は約600社に達する。

 その一方で「事務作業の効率化までは手が回っていなかった」と簗場次長は振り返る。セブン銀が処理する口座開設申込書は1日当たり約800件。以前は60人の自社従業員が対応に追われており、基本的に紙ベースの処理だった。

 セブン銀は2011年3月期に業績を落としたものの、2012年3月期は増収増益基調にある。2011年12月には東証一部に上場し、事業をより拡大していく方針だ。事務作業の効率化は不可欠だった。

 狙いはもう一つあった。他の金融機関を対象とした口座開設サービスの外販だ。2010年6月に就任した二子石謙輔社長が挨拶回りの際に、事務コストの削減に悩む声を多く聞いたのがきっかけだったという。セブン銀は自社の事務作業の効率化とビジネス展開の両方をにらみ、BPOや情報システムなどの仕組みを整備していった。