ソーシャルメディアと情報システムを組み合わせて効果を上げるための一歩めをどう踏み出せばいいか。ユーザー企業やIT企業への取材から五つのポイントがみえてきた。(図10

図10●企業がソーシャルメディアを活用するための五つのポイント
図10●企業がソーシャルメディアを活用するための五つのポイント
目的の明確化や、基本原則を定めた利用ガイドラインの策定などが必要になる

活用の目的を明らかにする

 ポイントの一つめは、ソーシャルメディアとシステムを組み合わせる目的を明確に定めることだ。ソーシャルメディアを組み合わせるシステムの種類や用途について、自社の業務に応じて向き・不向きを見極める。図4に示したペースレイヤリングの考え方も参考になるだろう。

 情報システム部門自身でまず使ってみるのも有効だ。「使ってみて初めて分かることは多い。システム部門がソーシャルメディアの利点やリスクを理解すれば、システムの向き・不向きが見えてくるのではないか」。こう語るのは、ソニー生命保険の河村芳樹IT戦略本部副本部長だ。同社は「Google Apps」を使っており、標準で利用できるソーシャル機能「Google+」をシステム部門で試用することを検討している。

利用ガイドラインを策定する

 目的を定めたら、ソーシャルメディアを企業で利用する際に従業員が従うべきガイドラインを定める。これが二つめのポイントだ。「従業員が個人的にソーシャルメディアを使うのを完全に防止するのは難しい。早急に利用ガイドラインを整備すべきだ」と、アクセンチュアの沼畑幸二エグゼクティブ・パートナーは主張する。

 ガイドラインの内容は、就業規則に沿って決めるのが一般的だ。機密漏洩防止や誹謗中傷の禁止、従業員としての振る舞い、自社のソーシャルメディア活用の目的などがある。

 資生堂は2011年11月に、ソーシャルメディアの利用ガイドラインを策定した。特に重視しているのが、やらせやサクラと思われないようにするための配慮だ。「自社の商品に対する肯定的な投稿をする場合は、社員であることを公開する」と明記。これに沿わない投稿をして自社に損害が発生した場合は、懲戒処分の対象にするなど、厳格な姿勢で臨む。

小さく始める

 ポイントの三つめは、小さく始めて勘所をつかむことだ。ソーシャルメディアと連携して使うシステムの機能、取り込むデータの種類や量、対象業務や部門などを限定して、まずは目的に合った効果が得られそうかを確かめる。

 FacebookやTwitterといったソーシャルメディアの利用料金は無料。企業向けソーシャルメディアも、多くは無料の試用版を用意している。例えばChatterは、機能限定の無料版と、30日間限定の試用版がある。これらのサービスを使えば、システム構築コストを最小限に抑えられる。