ポストPC端末が1台25ドルで買えるようになったら、どんな活用方法があるだろうか──。これは決して夢物語ではない。世界に目を転じると、ポストPC端末の価格は急速に下がっている。

 例えばインド政府は2011年10月、超低価格のAndroidタブレット端末「Aakash Tablet」を発売した。インド政府がいくつかのメーカーに製造させた製品を50ドルで買い上げ、35ドルで販売する。7インチ型のタッチパネルを備えており、オープンソースソフトウエアのオフィスソフトである「OpenOffice」なども使える。

 さらに英国ケンブリッジ大学が支援する非営利団体、英ラズベリーパイ財団が現在、25ドルのARMプロセッサ搭載端末である「Raspberry Pi」を開発中だ。超小型のLinux端末で、HDMI端子経由でディスプレーをつないで利用する。

 日本におけるポストPC端末の価格は、3万~ 5万円が一般的だ。それが海外では10分の1以下の水準になろうとしている。新興国などで過激に進む低価格化が、日本や米国といった先進国市場に逆流する公算は高い。

 低価格化と同時に、ポストPC端末の多様化も進んでいる(図1)。ポストPC端末は、あらゆるシーンで活用可能になる。端末の活用の巧拙が今後の企業情報システムのあり方を、さらには企業の競争力そのものを大きく左右することになるだろう。

図1●ポストPC端末の今後
[画像のクリックで拡大表示]

 単なる活用どころか、前パートで紹介したトライアルカンパニーのように、ユーザー企業が端末をオーダーメイドするのが当たり前の世の中になる可能性さえある。そうしたポストPCの時代を迎えるにあたって、情報システム部門はこれまで以上に、ポストPC端末の最新動向に敏感になる必要がある。

あらゆる機器が端末に

 2012年以降、スマホやタブレット端末以外の、様々な形状のポストPC端末が登場する(写真1)。

写真1●種類が多様化しているポストPC端末
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば自動車メーカーは、自動車そのものを情報端末にしようと考えている。トヨタ自動車は2011年11月の「東京モーターショー2011」で、「走るスマートフォン」というコンセプトカー「Fun-Vii」を発表した。自動車のボディー自体がタッチパネルディスプレーになっており、様々な情報をボディーに表示できる。