ここ最近、海外の担当者と話をしていると、何かとPinterestの話題になることが多い。日本でも楽天の出資などがあり、ニュースなどで名前を聞くことが増えてきたため、読者のみなさんも既にご存知だろう。

 Pinterestは、現在特に米国を中心にユーザー数を急速に伸ばしている、画像の収集、共有をメインとした新しいソーシャルネットワーキングサービス(SNS)だ。Pinterestについては、ITproでも「今さら聞けない!Pinterestの使い方」として非常にわかりやすく紹介しているので、そちらを読んでいただきたい。

 このPinterestは、2012年3月時点のユーザー数が実に1300万人と、その勢いは文字通り衰える様子を見せない状況になっている。そんな中で、海外、特に米国の企業では、この新しいSNSを自分たちのマーケティング活動に取り入れようとする動きが次第に高まりつつある。

海外での活用パターンは主に5つ

 既に米国では、企業規模や、業界・業種を問わず、Pinterestのいろいろな活用方法が見られている。これらは、どうやら以下の5つのパターンに分けられるようだ。

1.既に自分たちが所有しているビジュアルコンテンツの公開先として活用する:これまで自分たちが制作してきた画像、映像などのビジュアルコンテンツが豊富にある企業が、そのショウケース的な位置付けとして活用するというもので、もっともシンプルかつ手軽な活用方法であると考えられる。製品やサービスを紹介する画像や映像の掲載はもちろん、企業によっては“役員紹介”というようなボードを設け、顔写真とともに、その略歴を紹介するというような試みもなされている。

2.ブログや企業サイトへの誘導として活用する:自分たちでブログを用意している企業によく見られる活用方法で、そのブログに対してトラフィックを誘導する導線の構築という位置付けで活用するパターンである。ブログに掲載したインパクトのある写真や目を引く写真をPinterest上で公開して、Pinterestからブログへの誘導につなげるというもので、このやり方が最近増えてきているようだ。もちろんブログだけではなく企業サイトへの誘導につなげるというやり方も可能であり、企業の活用例としてポピュラーなものになりつつある。

3.インフォグラフィック、データ、チャートなどのショウケースとして活用する:情報を視覚的に表現する「インフォグラフィック」が最近になって非常に活発になってきているが、このインフォグラフィックの公開先としてPinterestを活用する事例も増えてきている。インフォグラフィックだけではなく、自社で調査を行った(グラフや表などの)データ、ならびにチャートの公開先としても合わせて活用されてきている。また、インフォグラフィックやデータだけではなく、ホワイトペーパーや、その他電子書籍などのショウケースとしての活用例も増えてきている。

4.ムービーのショウケースとして活用する:1.と似た活用方法だが、写真ではなく、あえて映像だけを集めたボードを作り、そのボードを企業のムービーのショウケースとして活用しているケースもある。

5.コンテストを実施する:一部の企業では、Pinterestを使った「フォトコンテスト」を実施しているケースも見られる。これはユーザーおよび顧客から写真を募り、それを公開していく形になる。Twitterと同様、Pinterestでもハッシュタグが使用できるので、ハッシュタグを付けた投稿をうながし、コンテストを盛り上げていくこともできるだろう。ただし、こうしユーザー参加型で、かつ写真や映像を伴うコンテストを実施するにあたっては、当然のように著作権などクリアーしなくてはならない点も多々ある。そのため、実際に実施する際には慎重に検討すべきだろう。

 このように徐々に企業におけるPinterestの活用パターンも増えてきている。とはいえ、もちろんPinterest自体が、まだまだこれからのSNSである。そのため、その効果やパフォーマンスに関しては未知数な部分が多い。

 特に日本の場合は、現時点では、まだそのユーザー規模も、決して大きいとは言えない。そのため、サイトへの誘導手段としての活用や、コンテンツのショウケースとしての活用といった手法がきちんと機能するかという点についても見えない部分が多々あるだろう。

 だが、冒頭に触れたように、総額1億ドルに上るPinterestの第三者割当増資を楽天が中心となって引き受けるなど、日本でも今後注目されてくる可能性は高い。実際に日本でPinterestが多くのユーザーに使われるようになった際に、どのような活用をしていくかを、今から少しずつ考えていくことも必要になってくるだろう。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。