by Gartner
イアン・マリオット リサーチVP
足立 祐子 リサーチVP

 経済のグローバル化は、企業に大きく二つの効果をもたらす。一つは新たな市場を開拓できること。もう一つは、ITに関わる業務を外部のサービスプロバイダーに委託するアウトソーシングサービスを通じ、世界の人材を活用できることだ。

 企業は、アジアや南米、東欧や中欧などの成長市場へ、次々に事業を広げている。そして各拠点での業務を支援するため、ITインフラの運用や、ITを基盤としたビジネスプロセスを外部に委託するアウトソーシングを積極的に活用している。

 アウトソーシングの活用は、ITコストの削減と、ビジネス価値の向上を同時に実現できる手段といえる。ガートナーの調査からみても、アウトソーシングに対して世界中の企業のCIO(最高情報責任者)が期待を高めていることが分かる。

 ただし、アウトソーシングを活用する企業は、円滑な事業運営を妨げるカントリーリスクに直面する。2011年に起きた事象だけでも、アラブでの政治的混乱、日本の東日本大震災、タイの洪水、メキシコでの麻薬がらみの暴力事件、そして欧州債務危機と枚挙にいとまがない。

 アウトソーシング先を選定する担当者は、企業がこうしたリスクを適切に制御できる成熟度を備えているかを判断した上で、委託先となる国やサービスプロバイダーを包括的に評価し、最適な選択肢を見つけ出す必要がある。

 ガートナーは主要30カ国を選び、ITに関わるオフショアサービス拠点としての実力と、将来の可能性を調査・分析した。我々は調査に当たって、以下に示す10個の基準を採用した。委託先のサービスプロバイダーを選定する上で参考になるだろう。

  • 言語(ターゲット市場の言語に対する習熟度や資質)
  • 政府支援(IT産業への政府のサポート)
  • 人材(労働者の質と量、将来の拡大可能性)
  • インフラ(物流や交通機関など)
  • 教育環境(大学や大学院など高等教育機関の質と量)
  • コスト(労働コスト、不動産コスト、インフラコスト、通信コストなど)
  • 政治や経済の環境(安定性、汚職の度合い、安全保障、地政学上のリスク)
  • 文化的適合性(ターゲット市場との親和性)
  • 国際性における成熟度(多国籍企業のプレゼンスや、法律や税制における外国企業の扱い)
  • データや知的財産、プライバシー(法制およびその施行状況、従業員の態度)

 アウトソーシング先を選定する企業の担当者は、こうした基準に沿って各国を幅広く評価する必要がある。そして、国ごとの利点や欠点を理解し、企業のニーズに合う国を選択する。国の評価は定期的に更新し、評価の変動に応じてアウトソーシング戦略を見直す必要がある。

 同様にアウトソーシングを委託するサービスプロバイダーについても、サービスの質、社員のプロ意識、専門性、応答の速さ、契約の実務など多様な基準で選定する。選定した後も、定期的に評価を行い、最適なプロバイダーの選定に努めるべきである。