図1 技研公開2012の主な展示項目
図1 技研公開2012の主な展示項目
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図2 NHK技研のHybridcastの展示
図2 NHK技研のHybridcastの展示
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図3 ソーシャルテレビ「teleda」
図3 ソーシャルテレビ「teleda」
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 NHK放送技術研究所は2012年5月22日、「技研公開2012」のプレスプレビューを開催した。今回は、放送・通信連携サービスである「Hybridcast」やソーシャルテレビの「teleda」、超高精細映像の「スーパーハイビジョン」、すべての視聴者が快適に放送を楽しめるようにするための「人にやさしい放送」の実現に向けた技術など、36項目を展示する(図1)。

<Hybridcast>

 Hybridcastのブースでは、テレビメーカー5社(ソニー、東芝、パナソニック、シャープ、三菱電機)と協力して開発したプロトタイプ受信機を使い、携帯端末との連携や、放送と通信の同期合成、認証・提示制御のデモを行う。「HTML5ブラウザーを搭載し、アプリを動かしている」(説明員)という。会場では、例えばクイズ番組の進行に合わせてタブレット端末に4択問題を表示し、番組の出演者と同じタイミングで回答ができるといったサービスを展示する(図2)。Hybridcastの仕様についてNHK技研は、「今夏までに基本的なサービスを提供できるだけの仕様を固める予定」としている。

 Hybridcast関連では、フジテレビジョンとWOWOWも展示を行う。フジテレビが展示するのは、テレビCMの放送に合わせてタブレット端末にクイズの回答画面を表示させて、CMの商材のプレゼントに応募できるというサービスである。「Hybridcastの放送と通信を同期させる機能を利用している」(説明員)という。今回、技研公開に出展した理由については、「フジテレビはIPTVフォーラムの一員であり、テレビ向けのHTML5の国際的な仕様がこれから策定されようとしている。我々も民放事業者として色々と提案していきたい」と説明した。

 WOWOWは、サッカーの試合をテレビ端末で見ながらタブレット端末でその試合の得点シーンなどを再生できるデモを行う。「放送局側がソーシャルネットワークサービス(SNS)を用意し、ユーザーに試合の感想などを自由に書き込んでもらう。タイムラインを見ながらユーザーが盛り上がった場面を把握して、その映像を放送局側が用意し、タブレット端末で視聴できるようにするというイメージ」(説明員)という。タブレット端末で視聴できる場面については、テレビ端末の画面上でも把握できるようにする。テレビ画面の片隅の部分に、視聴できるシーンの静止画を一時的に表示する。「テレビ端末ではリアルタイムの試合を視聴してもらい、過去の場面はタブレット端末で視聴してもらう。端末ごとに役割を分けることにした」という。

 WOWOWはタブレット端末の使い方の提案として、リモコンアプリも展示する。「タブレット端末でVODのコンテンツを選んで、それをテレビ端末の画面上で再生するといったこともできる」という。テレビ端末とタブレット端末のアプリは両方ともHTML5ブラウザー上で動かしている。

<teleda>

 NHK技研はteledaの展示において、ほかのユーザーと番組の感想やお薦め番組の情報を共有できるサービスを示した(図3)。「シンプルな操作で遠隔地にいる家族や友人と一緒に番組を視聴し、高齢者も含めた幅広い世代のユーザーが簡単にコミュニケーションを楽しめるシステム」という。NHK技研は今後、試作したソーシャルテレビによる実験を通じて、実用化に向けたサービス要件を明らかにし、技術開発を進めていく方針である。

<人にやさしい放送技術など>

 人にやさしい放送技術に関しては、気象情報を対象にした手話CGへの翻訳システムを展示する。過去の翻訳用例を節単位翻訳で直接利用したり(用例翻訳)、翻訳知識の機械学習データとして間接的に利用することで(統計翻訳)、気象ニュースを手話に翻訳するシステムである。自然な手話動作を生成するため、人体CGモデルにおいて口やまゆなどの顔の動きを改良するとともに、それらの動きを表現できるようにTVML(TV program Making Language:NHK技研が開発しば番組制作記述言語)を拡張したという。

 ニュース原稿の文章を外国人などにもわかりやすい日本語に変換するシステムも、人にやさしい放送技術の展示の一つである(NHK報道局およびNHK放送文化研究所との共同展示)。このシステムは、やさしい日本語ニュースを作るスタッフである「1次書き換え者」と「編集者」の共同作業を支援する。ニュース中の難しい単語を指摘する機能や、ニュースの全体的な指数を表示する機能を搭載した。元のニュースと書き換えたニュースをペアにして、用例データベースに蓄積する機能も備える。新たな書き換えを行うとき、似た表現をこのデータベースで検索することで、過去の書き換え例を参考にできる。

 このほかに「V-Lowマルチメディア放送の端末」や「145インチスーパーハイビジョンディスプレイ」、「地上波2チャンネルを使ったスーパーハイビジョンの伝送」、「ラウドネスによる音声レベル管理」、「インテグラル立体テレビ」、「超高精細空間光変調器」なども展示する。技研公開2012の一般公開は、2012年5月24日から27日までの4日間である。

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