勘定系システムの開発失敗を巡るスルガ銀行と日本IBMの裁判について、東京地方裁判所が3月29日に下した判決の詳細が明らかになった。日本IBMが判決について閲覧制限を申請していたため、これまで日本IBMに約74億円の賠償を命じた判決理由は公開されていなかった。
今回、日経コンピュータが入手した判決文によれば、日本IBMが敗訴した最大の理由は、同社が勘定系パッケージソフト「Corebank」の選定に際し、リスクの回避策など十分な検討を怠った点にあった。今週の週末スペシャルでは、判決文にもとづく解説とともに、判決がITプロフェッショナルにどのように受け止められたか、さらに判決に至る経緯を振り返ってみよう。まず、判決文にもとづく解説記事を紹介する。
4年間にわたった裁判は、ITベンダーとユーザー企業にそれぞれどのような教訓を残したのか。次の記事では、弁護士やIT業界の有識者への取材から、スルガ銀-IBM裁判の深層を探った。
アンケートではITベンダーの4割が判決を「妥当」と回答
判決後の4月12日から18日にかけてITproで実施したアンケートでは、「スルガ銀-IBM裁判」の一審判決について「妥当」と考える人が49%で、「妥当でない」の31%を大きく上回った。
属性別に回答を見ると、ユーザー企業に属する回答者は68%が判決を「妥当」と答えた。一方、ITベンダーに属する回答者も39%が「妥当」と答え、「妥当でない」と答えた38%をわずかに上回った。ITベンダーには厳しい判決だったが、それでも裁判所の判断を支持する声が多かったことになる。
判決までの経緯を振り返る
第一審の判決は関係者のみならず、ITベンダー、ユーザー企業それぞれの立場の人々に衝撃を与えた。以下に、判決直後と判決までの裁判の経緯を取り上げた記事を紹介する。
判決直後の第一報および続報
- スルガ銀-IBM裁判、日本IBMに74億円超の賠償命令
- スルガ銀-IBM裁判、東京地裁はITベンダーの責任を重く認定
- スルガ銀-IBM裁判、「控訴する方針」と日本IBM
- スルガ銀-IBM裁判、日本IBMが控訴
裁判の経緯
- スルガ銀がIBMを提訴、債務不履行による損害など111億円超を賠償請求
- スルガ銀行と日本IBMのシステム開発失敗を巡る裁判がスタート
- スルガ銀-IBM裁判の訴状内容が判明、要件定義を3回繰り返す
- 「改変を強要された」、スルガ銀-IBM裁判で日本IBM副会長
- 「日本IBM副会長の証言は失当だ」、裁判に関してJTBのIT部門長が反論
- スルガ銀-IBM裁判、終盤戦へ