東京ケーブルネットワーク(TCN)は、2011年8月から東京エネシス、メディアキャストと連携し、「CATV-スマートグリッド」の確立を目指した消費電力量の「見える化」実証実験を展開してきた。目的は、スマートグリッドにおけるケーブルテレビの役割や優位性を確認し、事業モデルやサービススキームの基礎構築を目指すことである。

(1)電力量のリアルタイム計測機器の設置設計・施行、システム稼働確認
(2)計測データのクラウドサーバーによる情報集積と管理
(3)サーバーに蓄積した各種データのオンデマンドアクセス「見える化」
(4)システム全般の使い勝手・展開性
(5)ケーブルテレビのRF-IPサービスや地域WiMAXの活用性
(6)データ放送など既存メディアや端末の利活用
――などについての検証を行ってきた。

 この実験を踏まえて、ケーブルテレビの強みを生かしたサービスの考え方について、TCNの遠藤昌男氏(執行役員 事業企画室 兼 経営管理部担当)に聞いた。「日本のスマートグリッドの取り組みはおおむね市町村単位。ケーブルテレビは放送・通信事業者であるとともに、地域事業者であり、親和性が高い」という考えに基づき、以前から取り組みを進めていた。行政との連携や実ユーザーを交えた実証実験の推進、地域への訴求力などがケーブル局の強みである。

 昨年開始した実験は、「改正省エネ法」や東京都の「地球温暖化対策報告書制度」などの関連法案があり、例えば「エネルギー管理者を持てない中・大規模事業所(行政を含む)をサポートすること」をターゲットにしたものであり、個人向けではない。

 実証実験の概要は以下の通り。東京エネシスが開発したワイヤレス電力量計をTCNのユーザーの建物へ設置する。電力量の計測機には、2種類のメーター(15Aまで測定できるコンセント型と120Aまで測定できるCT型)を使用した。分電盤だけではなく、ビル内の電力配線の要所に設置する。電力メーターによる計測データはZigbee(センサーネットワークを主目的とする近距離無線通信の規格の一つ。消費電力が少ないのが特徴)でいったんM2Mノードに集められ、そこからTCNのケーブルインターネットや地域WiMAXを通じてクラウドの管理サーバーにリアルタイム送信し集積し、データを分析して管理・監視する。Zigbeeの代わりに、一部では屋内PLC(電力線通信)を利用した。

 分析結果は、ユーザーから遂次アクセスでき、閲覧できる。また、電力使用量が閾値を設定すると、警報を指定メールアドレスに送信する。またコミュニティチャンネルのデータ放送内でも各種の情報を閲覧できる。

ASP型とし横展開し全国のケーブルの利用を想定

 こうした実験を踏まえ、提供できるサービス・メニューとしては、法人事業所(自治体を含む)を対象にした「使用エネルギ量の監視「見える化」サービス」「各種必要なレポート作成代行・お手伝い」「省エネ手法の提案・共同検証作業」などを挙げた。

 事業スキームについては、どこかの自治体がスマートグリッドに関心を示したときに、地元ケーブルテレビ局がすぐに対応できるように、ASP型の展開モデルを想定する。共同でプロジェクトを展開してきた東京エネシスがASP事業者として機器を提供したり、サーバーを用意する。ケーブルテレビは適正な経費と利潤を乗せて、全国各地でサービスを展開するという形態を想定する。この場合、TCNもASPのサービスを利用する一事業者という形になる。

 TCNによると、「電力の見える化」をベースにした事業スキームは既にほぼ確立し、サービスインできる体制にあるという。しかし、ここにきてHEMS(home energy management system)やBEMS(building energy management system)など「見える化+デマンドレスポンス」の可能なネットワークに補助金を出すといった動きが顕著になってきたことなどから、対応を検討中と説明する。例えば事業所のエアコンの設定温度を外部から制御することを可能にするインフラを整備するというイメージであり、大きな可能性があることから次のステップとしてこうした展開を検討している段階という。

 なおTCNは、東京エネシスとの電力見える化事業に加えて、日本テレビワーク24との連携による低消費電力な照明器具であるLEDの普及促進事業、省エネのコンサルタント事業を展開するエコエナジーとの連携という体制を構築している。この三つ柱で「パワー&エコサービス」を推進する計画だ。