日本ではその存在はあまり知られていないが、スマートテレビを語るときに、忘れてはならない企業がある。テレビやセットトップ・ボックス(STB)向けに、統合的なコンテンツ・ガイドを提供する米Rovi社である。

 膨大な量のコンテンツへのアクセスを可能にするスマートテレビでは、ユーザーが見たいコンテンツをすぐに探せてアクセスを可能にすることが非常に重要になる。そのとき、コンテンツ検索のカギになるのが映像や音楽などに関する「メタデータ」である。同社では、約300人の専門家が番組の内容や出演者、出演者の活動履歴などのメタデータを人手で作成しており、それを大量に保有している。その対象は、映画、テレビ番組、音楽、書籍、ゲームと幅広い。

 同社はこうして蓄積したメタデータ、および独自に開発した電子番組表(EPG)をCATV事業者やテレビ・メーカーなどに提供してビジネスを拡大している。既に韓国Samsung Electronics社やソニー、パナソニック、東芝など大手テレビ・メーカーを顧客として抱える。

 例えば、Samsung社が2012年春に発売したテレビ「Samsung SmartTV」に載せた、VODの横断検索機能に使われるメタデータは、Rovi社が提供しているという。

 同社は、顧客に提供する電子番組表などに向けてインタラクティブな広告を配信しており、既に米国の4000万世帯を含む世界で5000万世帯にリーチしているという。米国では全世帯の40%にリーチしていることになる。「2009年以降、当社の広告収入は倍々ゲームで増えている。テレビ・メーカーなどライセンシーに対して広告売り上げを分配しており、テレビ出荷後の収入源として注目されている」(Rovi社)という。

 2012年1月に発表した統合型コンテンツ・ガイド「TotalGuide G2」()は、電子番組表のほかに、放送番組やインターネットのVOD、CATV経由の動画コンテンツなどを横断的に検索してユーザーに提示する機能を持つ。さらに、TwitterやFacebookなどによるソーシャル推薦機能、インタラクティブ広告の表示機能などを実装している。

テレビなどに向けた統合型コンテンツ・ガイド
Rovi社が2012年1月に発表した「TotalGuideG2」。画面左にJPMorgan Chase社の広告が表示されている。2012年第2四半期中に開発完了予定。同社はEPGの開発に必要な特許を、世界で5000件以上保有するという。
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 同社は日本では電子番組表「Gガイド」を提供しており、2011年9月にはiPad向けのアプリを公開した。地上波からBS放送まで全チャンネルをカバーしたほか、番組詳細情報などを参照できる。

 メタデータを核に、スマートテレビ時代の「陰の主役」として存在感を日々増している。