著者はインドのIT大手HCLテクノロジーズのCEO。グループ会社のトップから、業績が伸び悩んでいた親会社のCEOに抜擢され、4年間で売り上げ、利益を3倍に、顧客数を5倍に、離職率は半減させるなど目覚しい成果を上げた。

 「従業員第一、顧客第二」というポリシーを掲げ、逆ピラミッド構造の組織を志向。その実現手法を具体的に著している。1つの象徴となるのが「アムステルダムの窓」だ。著者が訪れたアムステルダムの知人の家は窓が大きく、外部から見えやすいがゆえに、住人が家の中をきれいにした。それに気づいた著者は、経営にも「透明性」を取り入れることで社員の自律的な改善を促そうと考えた。

 その手法の1つが間接部門のオープンチケット導入だ。社員が間接部門に仕事を依頼する際にチケットを発行するシステムを導入し、その進捗を公開した。これによって依頼が放置されることがなくなり社員の満足度が上がった。さらに間接部門の社員も、「自分たちが多くの仕事をこなしている」という事実が見える化されたことで、モチベーションが上がったという指摘は興味深い。経営環境の違いはあるものの、日本企業が学べる点が多い。

社員を大切にする会社

社員を大切にする会社
ヴィニート・ナイアー著
穂坂 かほり訳
英治出版発行
1680円(税込)