ユナイテッドアローズは、スマートフォンやタブレットの活用に積極的に取り組んでいる。スマートフォンやタブレットを店頭における在庫検索や、オフィスや自宅での情報活用など、さまざまな用途で活用している。私物スマートデバイスの活用も、2010年から開始している。

図●ユナイテッドアローズでのモバイルデバイス活用
図●ユナイテッドアローズでのモバイルデバイス活用
ユナイテッドアローズの資料より引用
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リモートアクセス制限と仮想デスクトップ活用

 同社の取り組みの特徴は、会社が配布する端末と、個人が所有する端末を、しっかりと使い分けている点にある。使用する用途や業務への活用範囲を見極めて活用。

図2●モバイルデバイスの利用形態による、利用可能なネットワークやアプリケーションの違い
図●モバイルデバイスの利用形態による、利用可能なネットワークやアプリケーションの違い
ユナイテッドアローズの資料より引用
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 私物スマートデバイスは、主にメールの閲覧やグループウエアへのアクセスに利用している。e-Janネットワークスのリモートアクセスサービス「CACHATTO」を経由して、社内にあるExchange Serverなどにアクセスする仕組みを、2009年に整えた。現在は社員が所有する端末がスマートフォンにシフトしていることもあって、スマートフォンからメールを読み書きしている社員が多いという。

 個人端末からアクセス可能な情報システムは、一部だけに制限している。情報システムにアクセスする端末については、MDM(モバイルデバイス管理)システムなどで遠隔管理が不可欠だが、個人の端末にMDMのアプリを組み込むのは難しい。機種変更などが頻繁に発生する可能製があるからだ。

 個人端末は機種も多様だ。従来型の携帯電話もあれば、Android搭載スマートフォン、iPhoneもある。厳密に管理するのは現実的ではないと判断した。

 情報システムにアクセスしやすくすることで、社員にとって業務時間とプライベートの時間の境目が曖昧になり、メリハリを付けにくくなるとの考えもあった。当面は、個人端末と会社が配布する端末は使い分けていく方針だ。

 私物デバイスの利用は申請者のみで、利用にあたっては利用ルールの遵守などを定めた誓約書に記入する必要がある。

 また2012年1月からは、仮想デスクトップを使った私物パソコンの利用も開始している。現在のところ部長職以上に限っており、また利用できるアプリケーションも業務系は一部に留めている。

iPhoneとiPadを支給、在庫検索や商品カタログ

 スマートフォンとタブレットとして会社が支給しているのはiPhoneとiPadである。店頭に立つ販売担当者にはiPhoneを持たせ、その場ですぐに商品の在庫検索を可能にしている。PCが設置してあるバックヤードに行くことなく顧客に対応できるのが利点だ。

 2011年3月からは、iPad向けに商品の着せ替えアプリとカタログ閲覧が可能なアプリを開発し、利用を開始した。iPadは、ユナイテッドアローズの店舗に約400台を配布した。従来は10センチメートル以上の厚さがあった商品カタログを電子化し、iPadで閲覧できるようにした。さらに、商品を画面上で着せ替えできるアプリも用意した。

 社内でもiPadを活用している。2011年12月から、役員や部長以上の管理職にiPadを持たせ、いつでもどこでも情報システムにアクセスできるようにした。現在30~40人が、このような形でiPadを使っている「時間を有効に使えるため、生産性が向上した。何かあれば休日でも対応できるようになった」と、情報システム部の高田賢二部長は話す。