東芝は2011年4月に、商品統括部に「プロダクト&ソーシャル・インタフェース部」という部署を設立した。この部署の役割や目指しているものは何か。これからのテレビ視聴におけるソーシャル・ネットワークの役割は。東芝のプロダクト&ソーシャル・インターフェース部 部長 片岡秀夫氏に聞いた。

片岡さんは2011年4月に、商品統括部に「プロダクト&ソーシャル・インタフェース部」という部署を立ち上げました。この部署の役割や目指しているものを教えてください。

 当社ではテレビやHDDレコーダー、タブレット端末、パソコンなどの機器を開発・販売していますが、機器同士のみならず、それらを外部のソーシャル・ネットワークにつないで新たなサービスを開発する専任組織です。ただ単につなぐのではなく、理想とするのは「人と人のつながり」を作ること。だから、「ソーシャル」という言葉を部署名に入れました。

 メーカーでも、複数の製品部門に横串を通した特別プロジェクトを立ち上げることはよくやります。しかし、この場合はフルタイムではないので忙しくなると自分の製品を仕上げることに注力してしまう。そうなると、連携は後回しになり、他社がやっていないことを実現するのが難しくなります。だから、我々のような専任組織が必要なのです。

 これまでに「RegzaAppsConnect」として、機器連携のためのスマートフォン/タブレット端末向けの各種アプリを開発・提供しています。例えば、放送中の番組やHDDレコーダーに録画された番組をタブレット端末で視聴できたり、HDDレコーダーに録画された番組の面白い場面を他のユーザーと共有し、それを頭出し再生できたりします。

新しい組織作りで何を重視しましたか。

 ソーシャル・ネットワークでは若手の視点が重要です。我々、おじさん世代にとって、ソーシャルは青春時代のカルチャーではないわけですから、いくら想像しても肌感覚では理解できません。だから、組織を作るときも、前から目を付けていた若手から知見を集めたり、彼の周辺にいい人材がいないかなどを聞きました。デジタルプロダクツ&サービス社の社長からは「ちょっととんがった人たちを集めて、新しい文化や事業領域、ビジネス・スタイルを作れ」と言われています。

 最初は私一人での出発でしたが、チームのメンバーは続々と増えています。最近では、各製品部門の設計部や営業部など多方面から積極的に協力を求められるようになりました。研究所の人たちもアイデアを出してくれるようになるなど、草の根的な社内ネットワークの中心的存在になりつつあります。

スマートテレビの時代には「タブレット端末こそがテレビになる」という意見もありますが、片岡さんはどうお考えですか。

かたおか ひでお
かたおか ひでお
1987年東芝入社。広告 部でメディアやビデオの 広告に従事した後、東芝の Web サイトやDVD 規格 のオーサリングを立ち上 げる。その後HDD&DVD レコーダー(RDシリーズ) の企画・仕様を作り、 「RegzaAppsConnect」 の企画・開発を指揮。す べてをポジティブに、全体 最適、現実解を求め、使う 立場から商品やサービス を構築することをモットー にしている。

 まさにそれは、我々が言い出していることです。今後もテレビ受像機自体は進化していくとは思いますが、ユーザーから見ると複雑化は避けられない。例えばSNSの閲覧機能を搭載しているテレビもありますが、ユーザーの手元にスマートフォンやタブレット端末があれば、それらを閲覧に使うのではないでしょうか。

 タブレット端末は、布団に入って寝る前に映像を見たい、外出先で映像を見たいという利用シーンに最適です。場所を選ばない視聴体験を実現します。録画番組についても、限られた時間の中で効率的に見るには、何もリビング・ルームにある大画面のテレビだけでなく、タブレット端末でもいいでしょう。

 RegzaAppsConnectは、このようなさまざまな利用シーンを想定して開発しました。現在はTwitterと連携していますが、単にTwitterが使えるだけでなく、有機的な融合を仕掛けています。例えば、録画番組はリアルタイムでないので、番組に関わる名前で関連するツイートを表示したり、放映中の番組では放送局が付けたハッシュタグで関連のツイートを抽出します。

これからのテレビ視聴におけるソーシャル・ネットワークの役割は何でしょうか。

 必須の存在になると考えています。視聴できるコンテンツの数が膨大になり、見たいものを探すのが大変になるからです。もちろん、友人が推薦した番組を単に再生できるだけでは若者はすぐに飽きてしまうので、SNSを活用してより楽しい体験を提供したい。

 例えば、録画番組の面白い場面のみを見られるようにする「RZタグラー」は、例え番組の一部でもいいから見てほしいという考えで作っています。こうした「きっかけ作り」が、テレビやHDDレコーダーなどの利用頻度を高めることにつながると考えています。