システムの寿命が延びている。最新の結果では14.6年で、この5年で約1年伸びた。一方、システム構築プロジェクトの成功率は高くはない。500人月以上のプロジェクトでは、40.5%が工期遅延、34.8%が予算超過、26.2%で品質の不満、に遭遇している。IT投資評価についても課題が多い。

 ビッグデータやクラウドなど、ITのトレンドは目まぐるしく変わる。一方で、事業の根幹を支えるシステムは、そう簡単にスクラップ&ビルドできるものでもない。中期的な視点でIT戦略を立案・実行する必要がある。

 前回はクラウドやポストPC端末といった新しいITの導入状況について紹介した。今回は視点を、企業の基幹系システムに移し、システムの寿命やシステム構築プロジェクトの成功率、IT投資評価の実態などについて見ていこう。前回同様、日本情報システム・ユーザー協会が実施した最新の調査結果「企業IT動向調査2012」(調査概要は上記)を基に解説する。

システムの寿命は14.6年

 事業環境の変化サイクルは短くなる一方で、システムの寿命は長くなる傾向にある。代表的な基幹系システムの寿命を調べたところ、全体平均では14.6年だった。2007年度の調査では13.8年なので、この5年間で寿命が約1年伸びたことになる。事業環境の変化に合わせてアプリケーションを保守しながら、末永く基幹系システムを使い続ける傾向が強まっている。

 システムの寿命は、システムの開発時期と今後の想定利用期間から算出した。選択肢に示した期間の中間値(ただし「21年以上」は21年とする)を基に平均値を求めた。その結果、現在利用している代表的な基幹系システムの開発時期は8.5年前、今後の想定利用期間は6.1年であった(図1)。調査時期は2011年10月なので、2003年4月に稼働したシステムを2017年11月まで利用する、というのが平均像だ。

図1●代表的な基幹系システムの開発時期と今後の想定利用期間
図1●代表的な基幹系システムの開発時期と今後の想定利用期間
システムの平均寿命は14.6年。8.5年前に構築したシステムを利用しており、今後、それを6.1年利用することを想定している

 システムの寿命を、業種別に見てみよう(図2)。システムの寿命が一番短いのはサービス業で11.9年だ。現在までの利用期間は平均より1.7年短い6.8年、今後の想定利用期間も平均より1年短い5.1年である。商社・流通のシステムの寿命は14.2年で、全体平均を下回っている。

図2●代表的な基幹系システムの寿命
図2●代表的な基幹系システムの寿命
寿命が短いのはサービス業、長いのは重要インフラ業と素材製造業

 これに対して基幹系システムの寿命が長いのは、素材製造(16.0年)や重要インフラ(15.9年)など、設備投資型の産業だった。