業務改善やシステム化の上流工程では、業務の流れを把握するために「業務フロー」を作成します。ここで作成される業務フローは、システム化や運用設計など後工程でも利用されます。

 前回は、業務フローを作成する際の重複や漏れを抑制する方法について説明しました。今回は、業務フローという成果物の作成にばかり目が行ってしまい、業務フローを作成する本来の目的を見失って使い物にならない成果物を生み出してしまったケースについて見ていきましょう。

病状:作成した本人も手こずる代物

イラスト:山崎 直子(マナスリンク)

 製造業A社は、基幹システムが老朽化したためシステムを再構築することになりました。まず業務改革を行い、あるべき新業務を定義した上で、それに適したシステムを構築しようという方針を立てました。

 そこで、業務改革を外部のコンサルティング会社B社に依頼。B社のコンサルタント3人がA社の業務担当者にヒアリングしながら、新業務の流れを業務フローにまとめることにしました。

 新業務フローの作成に着手して3週間が過ぎた頃のことです。A社の業務改革リーダーを務めるT氏に、A社の業務担当者から次のようなクレームが入りました。「B社が作成した新業務フローを確認するよう依頼を受けているが、新業務フローを確認できない」。理由を聞くと「新業務フローの大きさがポスターサイズ(A1)になっており、会社のプリンターでは印刷できない。パソコンの画面で確認しようにも、業務フローが大きすぎるので一部分しか画面に表示できない。全体を見ようと縮小すると、文字サイズが小さくなりすぎて何が書いてあるかわからない。こんな状態で、どうやって確認したらいいのか?」ということでした。別の担当者からは「業務フローを分割して印刷し貼り合わせてみたが、線がつながっていない箇所があるなど、業務を確認できる状態にない」との意見もありました。

 T氏は、B社に対して業務フローの修正を依頼しましたが、大きくなりすぎてしまった業務フローの扱いに業務フローを作成者したコンサルタント自身も手こずっているようで、いつまで待っても修正版は提出されません。毎週実施している進捗会議の場で催促するものの、「現在修正中」と答えるばかりで進展が見られないまま、なんと数カ月が経過してしまいました。

 結局、この印刷することができなかった巨大な「新業務フロー」は、内容を確認されることもなく放置され、完成に至りませんでした。この新業務フローをインプットとして利用する予定だった後工程の作業に影響を及ぼしたのは言うまでもありません。この業務フロー作成に費やしたコストや時間も無駄になってしまいました。